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ArtDiary ||| 村田 真のアート日記
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11月15日(土)

東向島の現代美術製作所で、「昭和40年会ヨーロッパ遠征」記者会見。ここはオープン前に1度見に行ったが、オープニングの「大岩オスカール幸男展」はまだ見てなかったのでいい機会だ。オスカールの作品は、ぎこちなさは残るけど、ためらいのない筆遣いが心地よい。
 記者会見には、オスカールのほか、昭和40年会会長の松蔭浩之、小沢剛、会田誠、パルコ木下、それにマネージャーとして加わった長谷川仁美が出席。全員スーツ姿でキメるはずが、なぜかパルコだけ軍服姿で笑える。もともと昭和40年会は、単に生年が同じというだけの遊び仲間。それがひとつのグループとして海外で展覧会を開くとなると、利害関係が生じたり、互いの意識の違いもあらわになってくる。でもやっぱり冗談のノリでそれを乗り越えようとしているのが彼ららしい。
 後半、大型新人の加入が発表される。明和電機の社長、土佐正道だった。

11月18日(火)

茨城県守谷町のアーカスへ。95年から始まったアーティスト・イン・レジデンスだ。アーティスト・イン・レジデンスは、3〜4年前から各地で行われるようになったが、どこも尻つぼみの観がある。そんななかで一番しっかりやってるのがここ。欧米とアジアから5人、日本から1人のアーティストを招いて、廃校になった小学校の教室をスタジオとして使っている。
 アーティストはみんなそれぞれおもしろいけど、特にヘンなのは、日本のアニメや風俗に興味を示す中国のタン・フイ、日本語や日本史を勉強し、自分がいかにアホかを作品化するフランスのピエール・ジョセフ、守谷町にいるはずのない鹿を探しているうちに馬に出会った島袋道浩。馬鹿ですね〜。

Art Infomation Index - Nov. 19, 1996
茨城県で《アーカス96》始動●村田 真
11月21日(金)

仙台で開かれるトヨタ・アートマネジメント講座の初日。しょっぱなの講演で「街とアート」についてしゃべる。実は昨晩、PHスタジオが仕事場に押しかけてきたので、行きの新幹線の中で草稿を書いた。お客さんは地元以外、東京、神戸、福岡からも来ている。最初の講演だから緊張したけど、終わってしまえばあとは楽。飲み屋で地酒を飲んで、生ガキ、白子、かも鍋をたらふく食って大満足。

11月22日(土)

講座2日目、今日は雨。午前中から夕方まで、CCA北九州、茨城県のアーカス、韓国の光州ビエンナーレと、アートと地域を巡る話が続く。光州ビエンナーレについて語った朴有福(パク・ユウポ)さんは、実は、ぼくがBTに書いた光州ビエンナーレの記事の誤りを、わざわざ韓国から電話で指摘してくれた人。要するに抗議の電話だったわけだが、今回直接話を聞いて納得。というより、ほとんど感動してしまった。朴さんが、高い理想を掲げた幕末の志士のように見えた。
 終了後、レセプション・パーティー。その後ワインバーへ。

11月23日(日)

今日が講座の最終日だが、聞かずに北茨城に開館したばかりの五浦美術館に寄って帰ることにする。最寄り駅は常磐線の大津港。特急で2時間ほどかと思ったら、特急は1日4本しかなく、前のはすでに出たばかり。しかたなく鈍行を乗り継いで、結局4時間近くかかってしまった。まあ天気がよかったので、右手に阿武隈山系の紅葉を、左手に太平洋の荒波をながめつつ、駅弁を2個も食べてしまいました。
 五浦は、東京美術学校や日本美術院の創設者である岡倉天心が、横山大観、菱田春草らとともに引きこもり、共同生活を送りながら日本画の研究に明け暮れた地。アーカスのアーティスト・イン・レジデンスも、実はこの芸術家の共同体にヒントを得ているって、知ってた? 美術館は、そんな茨城の北のはずれの海岸沿いにひっそりとたたずんでいるだろう、と思ったら大間違い。建物はでかいし、閉館まぎわなのに中は超満員の大盛況。いったいどこから来たんだ?
 開館記念展は「天心と五浦の作家たち」。日本画の虚構性を十分に堪能できた。

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