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村田vs名古屋対談
ヴェネツィア 作品ガイド

ヴェネツィア



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名古屋:あとは、そうですね、ジャルディーニの中では……。
村田:フランス館は、あれは何なんでしょうね。
名古屋:あれは要するに、テレビ局を開設したんだそうで、そのテレビ局でオープニング前後に、なにやら収録と放送を実際に行ったとか書かれたチラシがありました。私が行った時も、パビリオンの前にソファーを並べて、対談風のシーンを撮影していたようですね。ただ、これが作品だといわれても、見る人は脇を素通りしていくほかないですね。
村田:あれは、ずうっとやってんですかね。
名古屋:チラシによると、ずうっとではないようなんですが、一定期間中。もちろんビエンナーレの期間中はずっと、ビデオを流したりはするようですね。
村田:ふーん。ああいうふうに、パビリオンの機能自体をまったく変えてしまったという意味では、僕はちょっと面白かったと思うんですけれども、ただ、「これが作品だ」といわれても、なんかやですね。
名古屋:なにか、人を食ったようなところがありますね。ほかに印象に残ったものはありますか?
村田:えーと……。
名古屋:イタリア館は、チェラントの企画展やってましたけれども、あそこはさすがに巨匠が多かっただけあって、見応えありましたね。とはいってもそんなに、びっくりするほどすごい作品があったわけでもなかったですね。
村田:うん。
名古屋:確かに、今回のジャルディーニの印象としては、ドイツ、まあフランスもそうですけれども、ドイツ、それからまあロシア、オランダなど、前回あたりまでは非常にインパクトの強い作品を見せていたパビリオンが軒並みパッとしないということ。やはり準備期間が短かったためそういう結果になったと想像するほかないんでしょうけれども。そのなかで北欧館だけは若干、異色でしたね。例の、ヴェネツィアのラグーナの底のヘドロを持ってきて、その中に埋まっている陶器の破片やらなにやらを取り出して展示するというのもあそこでしたし、森万里子もあそこでした。まあ、森の展示は見なかったんですけれども。並んでたもんで。
村田:北欧館からは、いろいろな国の人が出ていましたね。マーク・ディオンという……。
名古屋:ああ、アメリカの人ですね。彼ですよ、ヘドロの人は。あと、なんかチョウのさなぎを育てるという……。
村田:5人いるんですね。とにかく、北欧じゃない国の人たちが入っている。これは面白い現象ですね。何なんでしょう、こういうのは。
名古屋:そうですね、特に最近のヴェネツィア・ビエンナーレで目立った傾向として、自国以外のアーティストを取り上げるというのがあります。まあ前々回のドイツ館のナム=ジュン・パイクなど……そういう動きが拡大するかにみえたんですが、今回は北欧館ぐらいで、ちょっと、新しさにも欠けていたという気がします。
村田:うんうん。
名古屋:個人的には、笑われるかもしれませんが、ロシア館の表現主義絵画、面白いですね。ああいうものが出てくるというのは、冗談でなく、なにかの揺りもどしではないかと……。
村田:ナハハハ……。
名古屋:(笑)期待を込めて言ったりするんですけれども。
村田:ロシア館って……記憶にすらないよ……(カタログを見ながら)これですか。ルポルタージュ絵画みたいな……面白くねえよ、こんなの(笑)。でも、ほっとしますね(笑)。
名古屋:ああ、そういえば、スペインから出ていたジョアン・ブロッサという人、あの人は前々回のサンパウロ・ビエンナーレにも出してましたけれども、非常に面白い作品つくるんですね。なんというか、ユーモラスで皮肉の効いた作品で。
村田:ちょっとなんか、デュシャンみたいだなあ。
名古屋:あと、今回ジャルディーニ以外で展示をやった国がありまして、ギリシャは両方でやってましたけれども、そのうちの別の所でやった1人がベネッセ・コーポレーションが主催する「ベネッセ賞」を受賞したわけなんですね。
村田:なんて人ですか?
名古屋:えー、アレクサンドロス・プシュホーリスとかいう……要するに、ビデオの画面が(観る人の)声で切り替わるという、なんか非常に素朴なインタラクティブ・アートを見るような……。
村田:そうだね。
名古屋:はたしてあれが、賞の趣旨である「革新的な表現」といえるのかどうか、ちょっと戸惑ってしまったんですが……。
村田:いずれにせよああいう傾向はどんどん増えていくだろうなあ。そうなってくると、これまでの国際展のイメージ、絵画とか彫刻とか、美術作品を見せるだけというイメージがどんどん変わっていくだろうなあ。
名古屋:ただ、べつに新しくないわけですよね、ビデオの作品というのは。前回もビル・ヴァイオラが映画館もどきのパビリオンにしてみせていましたが。
村田:まあ、なんていうのかな、博覧会みたいになってきている。で、センセーショナリズムに走っている。美術のもっている、静的な、静かに観賞するという形式が薄れて、もっと面白けりゃいいとか、笑えればいいとか、そういうのが増えてきつつあるような気がしますねえ。
名古屋:一方で、その反動かわかりませんが、非常に保守的な絵画や彫刻作品が、逆に目立ってくる。それを狙って、そういう作品を出してくる傾向も出てくるのかもしれませんね。
村田:うん。
名古屋:ジャルディーニ以外では、今回、関連企画として、カバコフ、アンゼルム・キーファーのかなり大規模な回顧展ですとか、あと、やはりビエンナーレに関連しているんでしょうけれども、「サラエボのためのアーティストたち」という展覧会、これが、カバコフナン・ゴールディンや、ジュリアン・オーピーなど、ベテランが顔をそろえていまして、そういう周辺の展覧会にかえって面白いものがあったような気がします。なかでも、アキーレ・ボニート・オリーヴァが企画した、「ミニマリア」という展覧会、こちらのほうが、チェラントが企画した「未来 現在 過去」よりも、作品の密度が濃いといいますか、「自分こそイタリアの正統的な現代美術を見せる資格があるんだ」という意気込みが伝わってくるような展示だったですね。
村田:それはどういう趣旨の展覧会なんでしょう?
名古屋:一番の趣旨はチェラントに対抗するということかもしれませんが(笑)、要するにジャコモ・バッラという、未来派で1910年台から活躍した人がいて、その人以後ということで……イタリア人だけで、44名出しているんですけれど、未来派からトランスアヴァングァルディアに至るイタリアの近・現代美術の流れを概観するというもので、たとえば「ミニマリア」というタイトルも、だんだんミニマルに近づいてくる、純化というか、還元化ですか、そういう流れを意味しているんでしょう。
村田:アルテ・ポーヴェラなんかも入ってるの?
名古屋:ええ、ジョヴァンニ・アンセルモなんかが入っていました。まあ、やはり、チェラントの手前、アルテ・ポーヴェラを前面に出すのは気が引けたのかもしれませんが。
村田:だけど「ミニマリア」というぐらいだからアルテ・ポーヴェラは避けて通れないし、結局アルテ・ポーヴェラに行き着くと考えたほうが自然なんじゃないですかねえ。
名古屋:そこがちょっと、疑問かもしれませんね。まあ要するに、ミニマリズムにしても、アメリカのミニマリズムじゃなくて、イタリアにはイタリアのミニマリズムがあるということを見せたい、そういう動機もあったんじゃないかと思います。
村田:はあ。どういう点でチェラントの企画展よりも良かった?
名古屋:そうですね、まず作品の数が、作家が44名ですから、チェラントのほどは多くないと思うんですね。あと展示も、1つの建物の中ですから、コンパクトに、かなり長い歴史を振り返って見せるという、そう凝った展示ではなかったと思うんですが、要領はよかったと思いますね。作品自体が非常に魅力的でした。一番多いのは50年代、60年代の作品で、アルテ・ポーヴェラだけじゃなくて、その周辺の、少し違った傾向の作品もかなりありました。フォンタナがかなりたくさんありまして、また、フランチェスコ・ロ・サヴィオという人がいますでしょう、やっぱりこれはアメリカとは違った、イタリア流のミニマリズムだということを示したかったんじゃないでしょうか。(文中敬称略)
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