feature
feature ||| 特集
home
home

村田vs名古屋対談
ヴェネツィア 作品ガイド

ヴェネツィア



page 1 page 2 page 3
村田:ふーむ。そういうふうに、そっちを評価するということは、逆にいえばチェラントの企画展が良くなかったという……
名古屋:そうですね。ただ私はじっくり見ている余裕がなかったものですから。それでは不公平かもしれませんが。ただ、内容的にも、チェラントのほうは、よくわからないですよね、趣旨が。
村田:「未来 現在 過去」という、あってないようなテーマでしたね。ただこう、30年間のアーティストを集めましたっていうふうな感じで、総花的で、まったく焦点を結ばない展覧会ですね、これは。
名古屋:ええ。そういう意味ではボニート・オリーヴァのほうは、「自分こそイタリアの現代美術史を編纂する資格があるんだ」という主張らしきものが、まだ見えていました。
村田:うん。
名古屋:森万里子が今回、北欧館とチェラントの企画展の両方に出していましたが、こういう“森ブーム”というのはいかがなものなのでしょうか?
村田:彼女の作品というのは、非常に、キッチュでばかばかしくて、僕は好きなんですけども。ただそれよりも、その背後にだれかがいるというか(笑)、なにか政治的な力を感じてしまうんですね。それがなんか、うさんくさいなあと思うんですけども。
名古屋:私は逆に、キッチュでばかばかしいゆえに、退屈でたまらないんですけれども。ただ、利用しようと思えば、非常に利用しやすい作品だと思いますね。ブームを仕掛けやすい作品だと。
村田:あと、チェラントの企画展では、ひとつひとつの作品のなかにはいいなと思うものもありましたけれども……ただなんか、全体の統一イメージがあまり浮かび上がってこない。カバコフが、「京都」をテーマにした作品を出していましたが、何なんでしょう、あれは。非常にばかばかしくて、好きなんですけども。
名古屋:まだ、かばんの中に紙(紙ふぶきの紙)が残っています(笑)。
村田:あれは桜でしょうか?
名古屋:桜なのか、雪なのか、雨なのか……。
村田:普通の人は見ないんだよね、(下に)石があるってのを……そのまま通り過ぎてしまって。
名古屋:紙ふぶきに気を取られて……。
村田:やっぱり、日本人だと、これは京都だと、これは外国人が見た日本の一種のパロディかな、とわかるでしょうけれども、ほかの人が見たら、なんだかさっぱりわからないだろうな、という気がしました。
名古屋:いかにもビエンナーレでありそうな……。
村田:ありそうな感じですね。あとシュナーベルは……。
名古屋:ええ、会場をずっと歩いていくと、一番奥にシュナーベルの絵画と彫刻があって、そこに行き当たるわけですね。やはりあそこは、一番の“上席”でしょうか?
村田:行き止まりかもしれない。
名古屋:袋小路……(笑) そういうニュアンスがあったのかどうか、そこまではわかりませんが。
村田:ジェフ・クーンズから入って、シュナーベルで終わると。なるほどねえ。
名古屋:ロバート・ロンゴが良かったという人が多いみたいですね。
村田:あ、そうですか。
名古屋:違いましたか。
村田:蔡(國強)さんは……ばかばかしくて、好きだな(笑)。
名古屋:結局、ばかばかしいものが、好意的に評価されるという……(笑)。そういう時代になってしまったんですね。
村田:そうですね。センセーショナリズムを批判しながら、ばかばかしいものを……。
名古屋:……評価する人がいるから。誰とは申しませんが(笑い)。
村田:これなんか(投影の作品を見ながら)……。
名古屋:ああー。それはかなり面白いという人がいましたね。
村田:いましたね。何が面白いのかわからない。福田繁雄じゃないかという(笑)。こういう、面白主義みたいなのは困りますね……これ、ペドロ・カブリタ・レイスは良かったですねえ。
名古屋:ああ、その人いつもそういう渋い作品なんです。面白くも、ばかばかしくもないところに、ほっとするものを感じますね(笑)。
村田:なぜか知らないけど、「これいいな」と思っちゃったんだよね。なんだかよくわからないけど、うまいな。またパビリオンにもどるけども、運河の向こう側が、僕はわりと面白かったですね。
名古屋:ああ、そうですか。実は私、運河の向こう側、あまり見なかったんですよ。ブラジル館なんか入ったら非常につまらなくて、がっかりした。ただこの、ヴァウテルシオ・カウダスっていう人は、ちょっと面白くなくもないんですが、やはり……ちょっとスノッブな感じがしますね。去年のサンパウロ・ビエンナーレにも出ていましたけれども、あっちの作品のほうがシンプルで良かった。
村田:この人ジャック・レイルネルは、なんか、名刺を並べるという……。
名古屋:まったく、愚にもつかない作品ですね(笑)。
村田:これは、現代のアート界の人脈をテーマにしちゃったという感じですねえ。
名古屋:ドクメンタには、彼らの偉大な先達エリオ・オイティシカが出品しているのに……。
村田:レイルネルも前回か前々回のドクメンタに出していて、その時の作品は、飛行機の座席のタバコの吸いがら入れを取ってきて並べたもの。それだけ覚えているんだけど。
名古屋:ああ、そうなんですか。面白いですね。
村田:あとこれ、ギリシャ館。けっこうすごかったんだけど。 パビリオンの床をぶち抜いて……。
名古屋:ほう。
村田:ぶち抜いて、地面に2つ大きな穴を開けて、そこを銀色に敷き詰めて……
名古屋:ある種の建築批評……
村田:でもなくて、なんかはじっこのほうに人形みたいなものが置いてあったりして、ちょっとなんかこう、おどろおどろしい雰囲気を醸し出そうかな、みたいな。そういうよけいなことしないで、ただぶち抜いただけだったら、もっと面白かったかなあと……
名古屋:意外なところでそういう面白い作品に出会うことが、まだあるんですね。
村田:あと、ルーマニアとか、ポーランドとか、素朴というか、新鮮な印象でしたね。なんかこう、“つくってる”という感じがあるわけなんですよ。「あ、まだつくるモチベーションをもっているんだな」という、妙に安心してしまったというところがありますね。
名古屋:「つくる」から「やる」に、雪崩を打って変わってきていますから。
村田:台湾もけっこう面白かったですね。
名古屋:だんだん面白くなってきているという感じでしたね。
村田:アジアでは資本主義の走狗というか、先端の部分を突っ走っていますね……。こんなとこですかね。そろそろドクメンタにいきますか……。(文中敬称略)
back……
ドクメンタ10/ ミュンスター/ 国際展総括
写真スクラップ
写真スクラップ・ブック
イリヤ・カバコフ
イリヤ・カバコフ
ジュリアン・シュナーベル
ジュリアン・シュナーベル
ジェフ・クーンズ
ジェフ・クーンズ
ロバート・ロンゴ
ロバート・ロンゴ
蔡 國強
蔡 國強
ペドロ・カブリタ・レイス
ペドロ・カブリタ・レイス
ヴァウテルシオ・カルダス
ヴァウテルシオ・カルダス
ジャック・レイルネル
ジャック・レイルネル
ギリシャ館
ギリシャ館
ルーマニア館
ルーマニア館
ポーランド館
ポーランド館
台湾館
台湾館

top
国際展目次国際展特集review目次review interview目次interview photo gallery目次photo gallery





Copyright (c) Dai Nippon Printing Co., Ltd. 1997