キュレーターズノート
京都市立芸術大学作品展/「FIX」展/京都オープンスタジオ:4つのアトリエ
中井康之(国立国際美術館)
2009年03月15日号
今期は通常より増して、外部の仕事などの事由により自己の意志によるフィールド・ワークが十分に行なえなかった。とはいえ、作品を見ること、作家の制作の現場に立ち会うこと、未生の作家を育成しようという画廊主たちと多くの会話を重ねるなどの機会は多かった。それぞれに興味深い体験であり、それについて書かねばならないことも山積している。本コーナーは本来的にはそのようなことをこそ書かれる場であると思われるのだが、諸々の理由によりそれは他の場所でなされるだろう。
前のレポートに
も記したように、京都に多くの新しい画廊が生まれている。残念ながら、その動向を大観できるほどの材料はまだ揃っていない。もちろん取り上げるべき活動を
行なっていないという訳ではない。しかしながら、それらの存在は、まだある違和感を持ち、その風土との距離が見えない状況であろう。このように述べると
まったく感覚的な物言いに過ぎなくなってしまうが、これらの画廊の活動が、その場所でどのように着地していくのか、しばらく観察を続けるしかないだろう。
という訳で、この時期、意識的に見て注目した展覧会は、京都市立芸術大学の「作品展」である。関西に居を定めて以来、同展をこの時期には可能な限り見る
ことを自らに課している。ここ数年、それは学生の卒業展という枠組みを越え、特に絵画を中心としてレベルが上がってきているように思われる(正確には「作
品展」は進級考査も兼ねているので全学年出品している)。同展は京都市美術館で長年開催されてきたが、1999年以降は、大学院生を中心として同大学構内
でも同時に開催されるようになった。その両者を十分に見る時間が取れない時には、大学構内での展示だけを見ることもあったが、昨年度、その見逃した京都市
美術館会場に見るべき作品があったことを知り、今回は、それぞれ一日をかけて見ることができるように以前から計画して時間をつくっていた。
初日は京都市美術館に足を運んだ。はたして期待通り、注目すべき作品を何点か見つけることができた。その多くは大学院1年生の油画科の学生であった。