キュレーターズノート

京都市立芸術大学作品展/「FIX」展/京都オープンスタジオ:4つのアトリエ

中井康之(国立国際美術館)

2009年03月15日号

 学内展では、例年のように多くの見るべき作品と出会った。特に、大学院2年の油画では和田絢、藤井俊治、山下春菜、飯塚菜菜らの作品に、あるレベルの完成度を感じた。
 ボールペンのような素材を用いた和田の緻密な作品群は総体としてひとつの世界をつくり出していた。藤井のイラストのような作品はその軽やかな描写と色彩 からは、絵画の文脈より映像メディアによって生まれる感性のようなものを思った。山下は、油彩のメディウムによって生み出される色彩とマチエールを巧みに 用いていた。その表現は、親密派と称された20世紀初頭のパリの画家たちの作品を思い起こさせるほどに手法としては正統なものである。飯塚の技法は、見る だけでは正確には把握しかねるものであるが、絵の具の皮膜を象眼していったような不思議な表現である。

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左:和田絢、右:藤井俊治

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左:山下春菜、右:飯塚菜菜

 さて、例年高い水準を示すのが博士課程の油画科の学生による展示であるINTERIM SHOWと特別にタイトルされたその場所では、樫木知子、羽部ちひろ、馬場晋作、ヒョン・ギョン、柳澤顕の5人による作品が展示されていた。樫木と羽部は去 年の4-5月に椿昇とMEMギャラリーの石田克哉と私の3人で企画した展覧会「ペインティングの恋人」に出品してもらったことがある(去年の6月の本コーナーでも紹介している。 なお、近々同展の記録集が発行される予定である)。その展覧会も、じつは去年の「作品展」を機縁としてわれわれ3人がステップボードとなるべき場所を設け ようとしたものである。すでに樫木はオータファインアートの作家でもあるわけだが、日本の伝統的な様式を巧みに取り入れた繊細な表現は、すでに多くの関係 者の知るところであろう。羽部の作品は、現実界と夢幻的な世界を往還するような独特な寓話的な世界を生み出すのである。馬場は、ステンレスに画像を 描くという手法で作品をつくってきた。描いている対象が存在感のない物であることがM・ピストレットとは違うとはいえ、どうしても同氏の作品を思い浮かべ ることがあったが、今回の作品はその鏡面に実態のないレース模様のようなものが描かれ、加えてその描かれた2枚の鏡面を90度で接合することによって、イ リュージョンを生み出していた。実態のないレース模様が視覚的に空間に浮かび上がったのである。ヒョン・ギョンは、エネルギッシュな表現方法もさることな がら自らのナショナリティを直接的に示唆する要素を臆することなく用いることによって、民族性と認識される色彩の使用にリアリティーを生み出しているので ある。さて、残りの柳澤のウォール・ペインティングである。彼の作品は大阪のギャラリーゼロで見たことがある。その時は、モノクロームによるグラフィック な表現は巧みだとは思ったが、それ以上のものではないと思っていた。しかし、その比較的大きな壁面にひかれた描線と、そのモノクロームによるグラフィック な小品が、見事なハーモニーを奏でていたのである。

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左:樫木知子、右:羽部ちひろ

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img14.jpg 左上:馬場晋作、右上:ヒョン・ギョン、下:柳澤顕

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