会期:2024/03/16~2024/05/26
会場:岐阜県現代陶芸美術館[岐阜県]
公式サイト:https://www.cpm-gifu.jp/museum/events/event/__trashed-2

器というと、茶碗に代表されるように、手に取る道具というイメージが強い。しかし、世の中には実にさまざまな大きさの陶磁器があることを紹介するのが本展だ。奥へ進むにつれ、展示品の大きさが徐々に増していく会場構成により、大きさの変化をリアルに体感することができた。まず「小さな器たち」として、ひと口サイズの「寄せ盃」に始まり、豆皿や水滴、香合などが並ぶ。いずれも高さや幅が10センチメートル以内で、見るからに細々としている。これほど小さな器を熱心につくり、用いて愛でるのは日本独特の文化であり、『枕草子』の「小さきものは、みなうつくし」ではないが、ひいてはそれが工業製品で良しとされる軽薄短小へのこだわりにもつながるのではないかと感じさせる。

八木明《染付小碗》(2000)H7.0cm

次に「手に取って心地よいサイズの器」として、茶碗をはじめ、皿や茶器など、食卓で用いる器が現われる。そもそも器は人間の手の大きさに合わせて設計されるなど、「手に取って心地よい」理由も随所で解説されている。さらに進むと「床の間の器」となり、花器や花瓶、壺などが登場する。いわゆる飾る器である。たとえ自身の暮らしにはなくても、茶室など特別な場所へ招待された際に目にするものだ。ここまでは想像の範疇の器の大きさであるのだが、展示はさらに続く。

伊藤慶二《鏡文字(ひらがな)》不詳 W15.9cm

ずばり「床の間を飛び出す器」として陳列されているのは、高さ50センチメートル前後の花器や壺、大皿などだ。こうなると確かに民家の床の間を飾るものではなく、陶芸家や作家が自らの腕や表現力を競う陶芸展や作品展向けの作品となる。その次にも「大作主義」として同様の作品が展示されているのだが、ここでは19世紀後半〜20世紀初期、日本が国家の威信をかけて万国博覧会へ出品した際の作品などが中心だ。いずれも大きいことが意味を成し、重要だったことが伝わる。

そして最後の間には「究極の飾る器」として、高さ150センチメートルという人間サイズの大飾壺が鎮座し、観る者をあっと驚かせる。それは皇居宮殿に納められた、人間国宝・加藤土師萌の《緑地金蘭手飾壺(萌葱金蘭手菊文蓋付大飾壺)》とほぼ同サイズの姉妹作《黄地金蘭手菊文蓋付大飾壺》で、岐阜県現代陶芸美術館が新たに収蔵した作品であることが解説されている。もしかすると同館にとって初お披露目となるこの作品を紹介したいがために、本展は企画されたのでは……と思わず邪推してしまうが、器がもつ多様性や大きさの迫力をとくと知れる展覧会であった。


加藤土師萌《黄地金襴手菊文蓋付大飾壺》(1968)H150cm


鑑賞日:2024/04/03(水)