会期:2024/02/29~2024/03/18
会場:日本橋髙島屋S.C. 本館8階ホール[東京都]
公式サイト:https://www.takashimaya.co.jp/store/special/20thcenturychair/index.html

日本随一の椅子コレクターであり、椅子研究家といえば、織田憲嗣(1946-)である。その彼のコレクションから100脚の名作椅子を厳選し、20世紀のデザインの変遷をたどるという本展は、さすがに見応えがあった。1910年代から順に時系列で時代背景や社会情勢を踏まえながら解説するデザインの流れは、まさに教科書を読むようである。そもそもデザインは産業革命を経て、西洋諸国が近代化するなかで生まれてきた概念だ。そのため20世紀初頭はまだデザインの黎明期であった。一方で、20世紀は二度の世界大戦があり、社会主義革命も起きた激動の100年である。そんな世の中の流れに大きく左右されながら、飛躍的な技術革新によって進化し、時には国策の一環にもなったデザインは、やはり激動の100年をたどるのだ。そうした面でも、20世紀のデザイン史は興味深い。おおよその知識を持っていたつもりの私も、改めて勉強になることが多々あった。

展示風景 日本橋髙島屋S.C. 本館8階ホール

展示風景 日本橋髙島屋S.C. 本館8階ホール

とはいえ、勉強的な側面ばかりではない。椅子を中心とするプロダクトの数々は、名作と呼ばれるだけあり、唯一無二の造形や機能、美しさを有したものが多く、眼福を得た。名作が多い理由は、黎明期を経て、成熟期に差し掛かった20世紀半ばに新素材や新技術が次々と開発されたため、デザイナーにとってフロンティアがぐんと広がったことによる。つまり多くのデザイナーが革新的なデザインに挑戦する機会に恵まれたのだ。激動的はあったが、これほど輝かしい100年というのもおそらく後にも先にもないのだろう。すでに飽和期を迎えてしまった現代のデザイナーからしてみれば、羨ましい面があるに違いない。

それでもデザインは、時代の写し鏡である。いつの時代にも社会をより良くし、人々を幸せにすることがデザインの使命だ。その目的のためにデザイナーは奮闘する。20世紀に活躍したデザイナーたちも、現代のデザイナーたちもそれは変わらないはずだ。本展では「デザインは人を幸せにできるか。」と問う。そうした目線で、これからもプロダクトデザインを眺めていきたい。

展示風景 日本橋髙島屋S.C. 本館8階ホール

展示風景 日本橋髙島屋S.C. 本館8階ホール


鑑賞日:2024/03/13(水)