会期：2024/03/03～2024/07/07
会場：東京都現代美術館［東京都］
公式サイト：https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/TCAA_2022_2024/
サエボーグと津田道子の2人展。サエボーグは巨大な空間に人形の家のようなセットを置き、ハリボテの樹木を配している。あちこちに茶色いオブジェが置かれ、大きなハエがたかっているが、これは巨大なウンコだ。家の門をくぐると、壁にはのどかな風景が描かれ、円形の台の上には犬のぬいぐるみが寝そべっている。台は床が発光するので華やかな円形舞台のようだが、犬は涙を流して寂しそうだ。 ぬいぐるみはちょうど人が入れる大きさだが、まさか会期中ずっと人が入っているわけにもいかないだろうと思ったら、動き出したのでちょっとびっくり。犬はこちらに寄ってきて哀れな表情で頭を差し出してきた。なでてほしいという仕草だが、一瞬ためらったのは、いくらパフォーマンスとはいえこれは展示作品だし、後ろに監視員がいたからだ。あるいは昭和のギャグ「踊り子さんに触らないでください」をチラッと思い出したかもしれない。これはひょっとして試されているのか？ だったら触ってやろうと思ってなでてみたら、今度はお手をしてきた。その手にはのるか（笑）。
そうこうするうちに周囲に人が集まり始め、犬もそちらに愛想を振りまき始めた。見ていると、最初に頭をなでたり手を出したりしたのは子どもで、次に外国人、最後に日本人の大人だった。これはひょっとして、いかにも哀れそうな犬に対する感情と、美術館における禁忌（作品に触れてはいけない、騒いではいけない、走ってはいけないなど）のあいだに生じる葛藤をテーマにした作品だろうか。だとすれば、日本の大人は感情を抑えてでも美術館における禁忌を守ろうとする点で、マナーがいいともいえるし、冷たいともいえる。
サエボーグ《I WAS MADE FOR LOVING YOU》［筆者撮影］
鑑賞日：2024/04/05（金）
