会期:2026/05/15~05/24
会場:BONUS TRACK GALLERY 2[東京都]
公式サイト:https://note.com/bonustrack_skz/n/neb95ed6a0dca

ポップ・アートはもちろんのこと、その後のシュミレーショニズム、テクノやヒップホップといったアートと音楽の双方で縦横無尽に試みられてきた「サンプリング」のカルチャーを文化的な原体験として持つデザイナー、アーティストの小田島等が自らの制作コンセプトとして掲げているのは「アノニマスポップ」、つまり匿名的なポップである。その例として彼は「世の中にあまたある牛キャラを総合してできあがっている★1 」かのような弁当屋の牛のキャラクターを挙げている。このように、とりたてて芸術性を見出せないような、日常的なイメージを自らの身体を通じアウトプットすることで、小田島はこれまで数多くの仕事、作品発表を積み重ねてきた。

活動30周年を迎えるタイミングで開催された個展「HEAD LUX KISS」は、そうした作者の探求の方法論的側面に注意を向けさせる機会だった。会場に入り目を惹いたのは、一連の「組み木ペインティング」である。


「HEAD LUX KISS」展示風景[写真:皆藤将(美学校)]

おおよそ色面ごとに支持体が分割され、組み上げられたこれらの絵画はそれぞれ彩色、マチエールが施されている。描かれているのはキャラクターであったり、静物であったりさまざまだ。私はこれまで小田島の──特にクライアントワーク以外の──作品にある表現と情報伝達の隙間をすり抜けていく素振りが、高度な操作によってなされていることは了解してきた。そしてその背後にある、デザインやイラストレーション、アートにとどまらない、ありとあらゆるジャンルからチョイスされるスタイルの取捨選択を、彼の「ポップ・アート」として享受してきた。

しかしこの度発表された「組み木ペインティング」のシリーズは、そうしたリミックスを経るがゆえに看取しづらくなっていた雄弁さが、近代絵画以降の構成的問題意識も伴なって見え隠れするという点において、小田島のデザイナーとしての活動も含むキャリアの中でも重要な位置づけを与えられるべき作品だと言えるだろう。

そのことを説明しやすいのは、比較的フラットな色面の多い《TECHNO FLOWERS 02》(下図)である。描かれているのは花瓶に生けられた花であるが、切断されたそれぞれのピースの隙間は、工業的な技術にある手作業の残滓としての痕跡を残している。そのカットラインは、まるでアンディ・ウォーホルのシルクスクリーンの擦れのようであり、これが差異として現われることによって画面全体に静かな振幅が生まれ、絵画としての強度が高められている。


《TECHNO FLOWERS 02》[写真:皆藤将(美学校)]

こうした操作が比較的分かりやすく示される一方で、全体としてはその操作がエゴとして表出せず、小田島らしい風通しの良さがキープされている。この印象の軽さは、色面を支持体ごと分割することによって、造形的であるにも関わらず、パズルのような遊戯性を持たせていることも影響しているだろう。

★1──「イラストレーター・デザイナー 小田島等」(『ワコムタブレットサイト』公開日表記なし、URL=https://tablet.wacom.co.jp/article/インタビュー小田島-等

(後編へ)※8/5公開予定

鑑賞日:2026/05/18(月)