
上映:2026/03/04~2026/05/10
会場:PLAY! MUSEUM(東京都立川市緑町3-1 GREEN SPRINGS W3)
公式サイト:https://play2020.jp/article/anno/
安野光雅の絵本は、私も子どもの頃に親しんだ思い出がある。代表作『ふしぎなえ』は、今思えば、マウリッツ・エッシャーのだまし絵に影響を受けたものだとわかるが、彼の作品の魅力はただそれだけではないことを、本展を観てつくづく感じた。例えば『ふしぎなえ』に続いて出版された絵本『さかさま』や『ふしぎな さーかす』は、不思議さに加えて心がほんわかとする空想に満ちている。ある状況や場面から空想することの自由や楽しさを読者に与えるのだ。また、私が最も好きだった絵本『もりのえほん』には宝探しやクイズ的な要素が含まれている。読者はとにかく絵をじっと見つめて想像力を働かせなければいけないのだが、見方を変えれば、案外とそれが森の実態ともいえる。野生動物や鳥たちは木々の影に身をじっと潜めて、危険を回避しているからである。つまりただのトリックアートというより、安野の作品にはその驚きの先で世界の真理を読者にやんわりと伝えようとする意図があるのではないかと思えるのだ。
展示風景 PLAY! MUSEUM [PLAY! 提供、撮影:太田太朗]
その点が顕著に現われた絵本が『おおきな ものの すきな おうさま』である。これは典型的な暴君をモデルにした『裸の王様』にも通じる物語で、自らの権威を示すがごとく、とにかく何でも大きな物であつらえないと気がすまない王様と、それにひれ伏す家来たちが延々と描かれている。しかし王様に忖度するのは人間だけで、自然界においては残念ながらそうはならない。それを伝える最後のオチがなんとも滑稽で、かわいらしいのだ。
本展は、そんな安野の絵本や絵画を全身で体験できる展示内容となっていた。なかでも見どころのひとつだったのが、『天動説の絵本─てんがうごいていたころのはなし』の映像化作品である。これはかつて天動説を信じていた人々が地動説を受け入れるまでを描いた物語で、世界の真理を伝えるという点で、まさに彼の世界観にマッチしたテーマだった。朗読スライドショーという形で観ることで、そのテーマの重さがずしりと来たのである。これら安野の作品を通して、世の中の不思議な出来事には何かしらの意味や真実が隠れていることを我々はもっと自覚すべきなのかもしれない。
展示風景 PLAY! MUSEUM [PLAY! 提供、撮影:太田太朗]
展示風景 PLAY! MUSEUM [PLAY! 提供、撮影:太田太朗]
展示風景 PLAY! MUSEUM [PLAY! 提供、撮影:太田太朗]
鑑賞日:2026/04/03(金)