発行日:2026/04/17
発行所:玄光社
公式サイト:https://www.genkosha.co.jp/book/b10166504.html

イラストレーションは複製メディアとともにあることがほとんどのため、社会との距離感も自然と近いジャンルである。よって、そのアウトプットは時勢──あるいは俗っぽく言えば世間──に対する影響を被ることもしばしばだ。イラストレーターを含むイメージの提供者たちは、こうした移り変わっていく地盤のうえに自らの創造性を発揮し、実践を積み重ねてきた。

いま、その現在地はどこにあるのか。先般、そういった問いを考察するきっかけになる特集を組んだ雑誌が発売された。『イラストレーション』250号(玄光社)の特集「このイラストレーターがすごい!」である。

同特集は通巻250号を記念し、第一線で活躍する描き手総勢107名が「『すごい』と感じるイラストレーターを3名ずつ選出し、コメント付きで紹介」★1したものだ。前身となるムックも含めると、50年近くにわたって主に国内のイラストレーションを紹介し続けてきた同誌であるが、このように同業者同士で大々的にその評価を明らかにするのは初めてのことだ。これまでこうした業界内評価が誌面に掲載されるのは、特集された描き手と近い関係者のコメントだったり、アンケート企画の設問で注目イラストレーターについて回答しているケースが多かった。

では具体的に誌面の言及に移ろう。まず結論を先に述べるならば、いままで同誌が積み重ねてきた価値基準と齟齬をきたすような結果にはなっていなかった。とはいえ、そのなかでの多様性を見出すことのできるものになっていたことも確かだ。『イラストレーション』はこれまで、専業のイラストレーターを中心としながらも、絵本作家、キャラクターデザイナー、マンガ家、ゲームのデザイナーといったさまざまな活躍の場を持つクリエイターを取り上げてきており、図鑑に掲載されるようなテクニカルなイラストレーションにも目配せを行なってきた。

107人の選者もこれら各職能から誰かしらが参加しており、名前を挙げられたイラストレーターを見ても、確かに和田誠(1936-2019)や横尾忠則(1936-)以降のデザイン系イラストレーションが中心ではあるものの、それ以外の分野の描き手も一定数取り上げられており、そうした点を踏まえてみると穏当な落着の仕方となっている。

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★1──『イラストレーション』2026年6月号[No.250](玄光社、2026)p.5

執筆日:2026/04/19(日)