
会期:2026/03/31~2026/04/13
会場:ニコンプラザ東京 THE GALLERY[東京都]
公式サイト:https://nij.nikon.com/enjoy/exhibition/thegallery/events/2026/20260331_tgt.html
ニコンプラザ東京 THE GALLERYで、国内の動物園で飼育されている絶滅危惧種を撮影した写真展、小川千夏「消えゆく肖像」が開催された。
出品された写真はいずれも、縦型のフレームで、背景が暗く、中心に据えた動物が目立つように構成されている。その均一化された様式は、肖像画や肖像写真、あるいはトレーディングカードのような印象をもたらす。写った動物の個体認定が可能な飼育員や動物園に通う人が見ればブロマイド写真のようにも見えるだろうし、野生と飼育環境下の生態差から気づくことがある人もいるかもしれない。
そうした眼力を持たない私がそれぞれの写真を遠くから見たとき、まず生態と剥製のどちらを撮ったものか、あるいはAIによるものかさえわからなかった。近づいてみると、皮膚の肌理や瞳の虹彩のにじみといった細部が見え、また暗くなった背景部分は完全な黒でなく、植物などが写り込んでおり、背景に対して重ね焼くような加工が行なわれていることがわかる。そして鮮やかな動物の姿が目を引く一方で、彼らと闇との間に浮かぶ薄暗い葉こそが本作に欠かせないものに見える。
[筆者撮影]
小川はバロック絵画を思わせる肖像写真の様式を用いることで、動物に人間と同等の尊厳を与えること、また古い肖像画に描かれた人物がすでにこの世にいないことを導線に、本シリーズが「種族の遺影」とならないように訴えかけることを企図したという。
絶滅危惧種とは「まだ滅んでいない」一方で、死に向かいつつある種族を指す。動物と闇との中間に写るおぼろげな背景は、そのまま生と死、保全と滅亡の狭間という状態を示してみせる。カメラが捉える景色は過去のものであることから、写真はすべて死に属するという言説への抵抗としても、この薄暗い中間部分は機能している。
加工された背景部分は、作品によってはぎこちない手の痕跡を残している。それは作家の介入、そのようにする必要があったという強い意志を感じさせるもので、そのふるまいこそがこの作品に魅力を与えている。作家の姿勢や存在を窺わせる要素が作品それ自体に含まれるといった、ドキュメンタリーとしての性質も備えた写真群である。
鑑賞日:2026/04/13(月)