
上映:2026/07/25~
会場:ユーロスペース[東京都]ほか全国順次ロードショー
公式サイト:https://www.mm-dancingvoice.com
あなたは、メレディス・モンクというアーティストを知っているだろうか。もし知っているとしたら、相当な音楽好きか前衛芸術に詳しい人ではないかと思われる。私は彼女のことをまったく知らなかったのだが、本作を観て、そのパワフルな歌唱力と独特の表現スタイルに一気に心を奪われてしまった。歌唱といっても、いわゆる歌詞(言葉)を伝えるための歌とは異なる。3オクターブ以上の声域をもち、自らの声を“楽器”と捉えているという解説が言い得て妙だろう。幅広い声域だけでなく、圧倒的な声量で、多彩な声色を使い、例えるなら動物の鳴き声や自然音のような“音”を自在に操るのだ。

©110th Street Films
かつて批評家たちはそんなメレディスの歌唱表現を「無意味な音節」や「家の猫がケンカした」などと、こき下ろしたという。しかしそうした冷笑をよそに、彼女は自らの信念と情熱のもと、歌手や作曲家、さらに演出家や振付家として、さまざまな音楽劇や映画、インスタレーションを手がけてきた。いまでこそ珍しくないが、1970年代当時にまだ、先駆けだったマルチメディア・アーティストとして活躍したのである。その背景には1950〜1970年代に米国で盛んだったハプニングなどの前衛芸術や、カウンターカルチャーの流れがあった。

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本作は、現在83歳になるメレディスの創作と人生の断片をつないだドキュメンタリー映画である。代表的な楽曲を中心に、彼女自身の言葉や足跡、作品を紹介するとともに、デヴィッド・バーンやマース・カニンガム、ビョークといったさまざまな著名アーティストらのインタビュー映像で、各章が構成されている。

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若い頃からニューヨークにある、階下がスタジオになったロフトに住み続けており、驚くべきは高齢になったいまでもその暮らしぶりが変わらないことだった。キッチンやバスタブがむき出しになったワンルームに、ペットの亀(2022年没)と共に慎ましい日々を送ってきたのだ。晩年には数々の栄誉賞を受賞し、また国際的にも高く評価された存在となったにもかかわらず、である。酷評を受けようが絶賛を贈られようが、それらに決して惑わされることのない孤高さというか、いつでも変わらない強くしなやかな気高さが、つまるところメレディスの魅力なのだと腑に落ちた。

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鑑賞日:2025/07/20(月)
『メレディス・モンク 踊る声、歌う身体』
2025年/アメリカ、ドイツ、フランス/95分
原題:Monk in Pieces
脚本:ビリー・シェバー、デヴィッド・C・ロバーツ
出演:メレディス・モンク、ビョーク、デヴィッド・バーンほか
配給:ユーロスペース