第13回 新千歳空港国際アニメーション映画祭
会期:2026/11/20〜24
会場:新千歳空港ターミナルビル(新千歳空港シアターなどを予定)
主催:新千歳空港国際アニメーション映画祭実行委員会
公式サイト:https://airport-anifes.jp/

すべてが整然とシステム化され、人工的に管理された世界。ケヴィン・エスキュー(Kevin Eskew)『Ensmoothening』(2026)が描くのはそんな「ディストピア」である。その風景は、地平線に向かって規則正しくグリッドが敷き詰められた透視図法的な空間であったり、街中であったりさまざまだ。そこには虫、亀といった生物は登場するものの、人の気配は希薄であり、死体として放置されていると思しき場面もある。遠い未来を思わせる舞台設定だが、それよりも同作を特徴付けているのは、ほとんどのシーンの四辺に枠が存在し、窓から向こう側を覗くかのような視点からアニメーションが展開されていることだ。

フレーム外から鍵盤打楽器を演奏する際使われるマレットのようなものが画面内の物体に干渉したり、機械的なメカニズムが場面を切り替えていくことから、すぐにこの作品が、なんらかの秩序の要請によって世界を管理している者の視点であることが理解できるだろう。しかも、この世界には外部がない。冒頭に登場する蝶が画面を見返してくるが、その向こうに映るのも、同じ無機質な透視図法的空間だ。この閉じ込められた世界で、アブストラクトなストーリーが展開されていく。


ケヴィン・エスキュー『Ensmoothening』(2026)より

同作には原作が存在している。アメリカのカルト的短編SF小説家、デイヴィッド・R・バンチの『モデラン』(1971)である。彼がこの短編集で展開するのは、絶えず戦争が行なわれ、人工物による要塞が点在する風刺的な遠未来の物語である。エスキューはこの世界観を忠実にビジュアライズした。『Ensmoothening』は後半、それまで風景に向けられていた視点が反転し、管理者が映し出されるのだが、その姿は『モデラン』で描かれる、わずかな「肉筋」を残し、それ以外は「新金属合金」で覆われたサイボーグである。

バンチによる架空世界・モデランをめぐる物語は、エスキューの作家性と深く共鳴している。過去作である『ナウ 2』(2019)においても、人間の存在よりも機械の自動的な作動に関心が注がれている。しかしアニメーションは、そうした無機的なものに独特な「生」を醸し出すことのできるメディウムである。『Ensmoothening』において、端的にそれは蒸気を放出する機械の躍動感であり、もしくはシャワールームで緊張から解き放たれたかのように壁に手をつくサイボーグの姿に見られるだろう。

ケヴィン・エスキュー『Ensmoothening』(2026)より

かつてのエスキューは肉感的な表現に注力していた。『ダム・デイ』(2012)は後期フィリップ・ガストンが引き合いに出されるようなたっぷりとしたボリュームが特徴的だし、触覚的な感覚が豊かな和田淳をエスキュー自身はインスピレーション源のひとつとしてあげている★。そしてこうした表現力が、モデランの世界に残されたわずかな「肉部品」を際立たせるのだ。

★──Amid Amidi (2013, August 13) “Dumb Day” by Kevin Eskew.Cartoon Brew.
https://www.cartoonbrew.com/shorts/dumb-day-87311.html

参考資料
・ハーラン・エリスン編『危険なヴィジョン[完全版]2』(浅倉久志他訳、ハヤカワ文庫SF、2019)

鑑賞日:2026/10/13(火)