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世界中で多くの彫刻作品やインスタレーションを発表するリチャード・ウィルソン。今回の横浜トリエンナーレでは、映像作品でもありインスタレーションでもあるという新作を発表する。80年代から度々来日し、日本でもこれまでにいくつかの作品を残している彼に、作品の構想とともに、日本との関わりについて話を聞いた。 |
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──作品プランはもう決まりましたか?
RW:はい。2月に来たとき会場を見て写真をいっぱい撮り、イギリスに帰ってから試行錯誤しながら決めました。
──どんな作品になりますか?
RW:私は彫刻家ですが、今回はビデオ作品をつくってます。会場の倉庫内にあっちこっちから花火がシューッシューッと流れ込んでいく映像で、トラックのなかで見せます。この作品は、現実からファンタジーの世界へと誘い、見る者に旅をしてもらうことに主眼を置いています。そのために経済的あるいはシンプルなものを使い、光や影、煙、輝き、暗さ、音といった非物質的なもので表現しています。始まりもなければ終わりもない、どこまでも続いていくような映像にしたかったんです。
──リチャード・ウィルソンさんというとハードな彫刻やインスタレーションのイメージがありますが、映像はこれまでにもつくっていたんですか?
RW:2001年に初めて映像作品を手がけました。映像は時間を意識するために使っています。例をあげれば、2003年にロンドンでやったプロジェクト。これは最初、彫刻として見せようとしたものですが、飛行機のボディをギャラリーに持ち込んで、12人のアシスタントとともに少しずつ分解していったんです。それを5分間に1コマずつ撮影して再生すると、実際に5週間かけて撮ったものが4分で見られるんです。ちょうどイモムシから蝶に変態していくような感じなので、《蝶》と題しました。このように映像は時間を凝縮してドキュメントできます。
もうひとつ、彫刻だと穴を開けたり壊したりするのは大変だけど、写真やビデオなら簡単にできるというのも利点ですね。
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ブレイク-ネック・スピード
(横浜トリエンナーレ2005のためのスケッチ)
2005
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──今回出されるのは映像作品だけですか?
RW:先の花火を使う作品がメインですけれど、この《蝶》という作品も映像部門で流します。
──川俣さんは今回、映像よりインスタレーションを多くしたいといってましたが。
RW:ええ、それは聞いてます。でも私の作品はトラックのなかで見せるので、映像でありながらインスタレーションでもあります。単に映像を流すだけでなく、トラックを映画館のようにするんですから。花火を使うアイデアは、80年代に日本に来たとき花火を見て使ってみたいと思ったんです。
──80年代から日本に来られていたんですか?
RW:これまで10回ほど日本に来ています。アーティストとして来たのは3回で、大きなパブリックアートをつくらせてもらいました。ひとつはファーレ立川、ひとつは袋井のワールドカップのスタジアム、もうひとつは越後妻有の作品で、これはロンドンにある私の家がひっくり返ったかたちのものです。
また、80年代には音楽バンドをやっていて、5週間ほど滞在したこともあります。工場からもってきたモーターや廃品で楽器をつくって、アコースティックな音を出し、見て楽しむものでもあったんです。演出家の鈴木忠志さんに呼ばれて、利賀山房や佐渡島にも行ったことがあります。
──川俣さんはリチャード・ウィルソンさんと同じ年だと思うんですが、彼のようなアーティストが国際展のディレクターをやることはどう思います?
RW:川俣さんとは仲のいい友だちだし、とても尊敬しています。彼は自分本位じゃないし、これまでもいろんな人たちと一緒に作品をつくってきたから、展覧会はうまくいくと思いますよ。
──もしリチャード・ウィルソンさんが国際展のディレクターを頼まれたら、どうします?
RW:お断りします。でも最初になにが求められているのか、聞くでしょうね。 |
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(8月25日、トリエンナーレステーション[旧関東財務局]にて) |
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リチャード・ウィルソン(Richard Wilson)
1953年、ロンドン生まれ。ロンドン在住。イギリスのインスタレーション・アートにおける代表作家の一人。おもな作品は、《天国への階段》(1994、ファーレ立川)、《日本に向けて北を定めよ(74°33'22")》(2000、越後妻有
アートトリエンナーレ)《Final Corner》(2002、ワールドカップ・プロジェクト、袋井市)、《20:50》(2003、サーチ・ギャラリー、ロンドン)など。 |
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