山口情報芸術センターが11月1日で5周年を迎え、それを記念して2つの特別企画展を同時開催している。ひとつは、YCAM館内で開催中の「ミニマム インターフェース」展。これは、情報化社会特有の文化的多様性を表現するキーワードとしてのインターフェースとその未来的機能を探求テーマにしているが、美術館やアートセンター自体を、ある種のインターフェースとしても見なしうるだろうという発想も込められている。その仕掛けとして8組のアーティストデザイナーが参加しているが、展示コンテンツのナビゲーションデザインに、こだわりを持たせたセッティングになっている。Suicaのタッチインターフェースのデザインでも知られるリーディングエッジデザインとの共同開発で、チラシの紙という存在そのものを非常にユニークなインターフェースツールにするもので、これはぜひエントランスで使って体験していただきたいと思う。展示そのものは、YCAMが開拓してきた独自の分野である〈アート+身体表現〉の視点を踏まえて、映像・写真・サウンド・建築オブジェ・プロダクトデザインなどの作品を選定し、YCAMの委嘱による新作や、日本初紹介となる新鋭アーティストなど、国内外のアーティスト8組による作品から、アートやデザインの中に組み込まれているインターフェースの多様性を引き出すかたちで紹介したものである。「ミニマム」とは形態や造形から発想しがちだが、今回はインターフェースを原義の界面機能とみなして存在論的ミニマムからスタートしている展覧会ともいえるだろう。
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「ミニマム インターフ ェース」展、会場風景
写真提供=山口情報芸術センター [YCAM]
photo: Ryuichi Maruo
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2つ目は、YCAMに隣接する温泉地区の公共空間を舞台にした「YUDA ART PROJECT」で、国内外で活躍する3組のアーティストが、光とインタラクションをテーマに、湯田温泉の各所を作品展示の場として展開したもの。中心集会所的機能を都市構造として持たない、碁盤の目のような並列的な湯田の町並みに苦労したが、それを逆手に取って、アクションがネットワークをトレースするようなトランスヴァーサル(横断的)な機能を各作品が町中に持ち込んでいるプロジェクトである。このプロジェクトでは、YCAMとアーティストがアイディアを出し合い、湯田温泉の選定ポイントにあわせて特別に制作した新作を発表している。ブリストル・サウンドを代表するマッシヴアタックのヴィジュアルショーデザインで一躍有名になったロンドンのUnited Visual Artistsが、林立するLEDをインタラクティブに使用し、空間全体を美しく変化させる新作《Array》を中原中也記念館の外庭にインスタレーションしている。また、温泉街に分散した4つのポイントを回りながらポートレート写真を部分的に撮影して合成していく《巡礼端末- The Terminal for Pilgrimage》をexonemoが担当。これはネットワーク化されていて、ストリート沿いの大スクリーンにそれらのアクセスデータが常に映写される。別の人どうしの合成も起こる仕組み。湯田に5カ所ある足湯のうち4カ所にインスタレーションしているのが、「ミニマム展」でも参加した新鋭アートユニットのSHINCHIKAの《足湯タイマー☆ぶらり旅》。名前の由来は大阪の新世界にある新世界地下劇場から来ている。 |
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United Visual Artists《Array》2008
写真提供=山口情報芸術センター[YCAM]
photo:Ryuichi Maruo |
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