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プライバシーステートメント
学芸員レポート
東京/南雄介|神戸/木ノ下智恵子|倉敷/柳沢秀行福岡/川浪千鶴
名村造船所跡地30年の実験
「NAMURA Art Meething'04→'34」
「vol.00『臨界の芸術論』」
神戸/神戸アートビレッジセンター 木ノ下智恵子
NAMURA Art・昼
NAMURA Art・夜
NAMURA Art・フォーラム
NAMURA Art・ミーティング1
NAMURA Art・シンポジウム1
上から昼の風景、夜の風景(撮影者/八久保敬弘)、実行委員フォーラム(撮影者/井上真洋)、真夜中ミーティング1(小原、橋爪、小関、撮影者/漆原未代)、シンポジウム1(浅田、岡崎、撮影者/漆原未代)
 一代=ジェネレーションとは、人間が誕生して親の跡を継いで子に至るまでの約30年間を示すと言う。この人生の区切りの定義、つまりは一時代を包括する月日には様々な出来事が起こり、一個人、すなわち、その時代の価値観が形成される。
 まるで映画のワンシーンのような悪夢が世界を震撼させた新世紀から数年、社会の中の芸術環境を鑑みたとき【今】はどのような状況で、どんな価値が形成されたのだろうか。
 指定管理者制度など当時の権力者の象徴として無計画に乱立された公共美術館などの精算を始めた公共文化事業。評価軸が数値化しにくいにもかかわらず、経済の枯渇と共に内部のアカウンタビリティーが問われるなど苦戦が強いられる企業メセナ。一部の階級層で成立しているために循環機能の停滞が危ぶまれるギャラリー市場。新たな組織体として期待されながら、関係する相互間のシステムが未整備で継続に苦悩するアートNPO。少子化に伴う生徒数獲得でサービス過剰な大学教育。イメージ先行型の実体が見えないアートマネジメント信仰者。アートの関わり代としてボランティアが増加する一方で起こる観客不在の現象など。いずれも顔が見えない範囲では、すべてにおいて疲弊した感がある。
 ただ、こうした総体的な見方ではなく、ミクロな個人の視点で芸術環境を鑑みたとき、それほど悲観した状況ではないと思える。
 本来、芸術文化の価値基準は、究極の【個】にあり、その多様な価値観が集合した結果が【パブリック】になる。マスではないマイノリティを崇め奉ることの虚しさを承知しながら、成熟した一個人の形成に関与する価値観を交歓する。その究極の【個】のネットワークが次代の価値観を創造し、ここでの実験が社会のシステムや制度を先導する。そういった意味で【芸術文化=アート】は知性と感性の遊戯によって社会や制度の本質を批判できる最良の領域なのかもしれない。
 一方、社会の物理的空間を形成する建築や都市計画はどうだろうか。戦後の高度経済成長期からバブル期まで、常に新しさを求めるモダンデザインが主流となって、スクラップ・アンド・ビルドを繰り返し、立地する場所の歴史や地域性、人々の記憶とは殆ど無関係に都市が生成されてきた。だがしかし、バブルが崩壊して長引く不況のあおりを受けている今日、既存の施設を改修・増築したり、休眠施設をコストパフォーマンスにもクリエイティビティを発揮して再利用する傾向にある。アートの領域においても、展示空間として最適と思われているホワイトキューブでは、空間が先回りして行為を保証することの貧しさや物足りなさを感じ【アートがまちに出る】現象へと繋がっている。これらは単に経済効率の問題だけではなく、新しさが飽和状態にある時代に、むしろ古さの中に「新しい価値」を見つけだす、概念のリノベーションが希求されている証だろう。
 リニューアル、リサイクル、リメイク、リミックス……この恐るべき【リre】のパワーが、マイナスをプラスに変換させる要因として有効であることは、環境、建築、経
済、アート、ファション、音楽などジャンルを横断して認知されてきた。既存の状態から新しい活動を始めることが可能な隙間を見つけて、個々のスタンスやモチベーションによって七変化させる醍醐味は、最も現代的な大人の遊戯ではないだろうか。
NAMURA Art・クルージング
NAMURA Art・シンポジウム2
NAMURANAT
NAMURA Art・リビングルーム
NAMURA Art・ミラーボール
上からクルージング、シンポジウム2(五十嵐、椿、撮影者/井上真洋) NAMURANAT(撮影者/漆原未代)、屋外リビングルーム、ミラーボール
 
2004年9月、その真価を問う壮大なプロジェクト「名村造船所跡地30年の実験『NAMURA Art Meething'04→'34』」が始動した。
 舞台は、大阪の南西に位置する住之江区北加賀屋という湾岸の工業地帯にある私有地。広大な敷地とドック、文化遺産のように幻想的な趣の対岸の鉄工所、実寸大の図面が描かれていた製図室など造船業の役割を終えた、夢の跡に魅了された有志のメンバーが、所有者や主旨に賛同する多くの尽力を得て本プロジェクトを創りあげた。
 「名村造船跡地」が象徴している時代の流れや文脈をふまえ、現在から2034年までの30年間<この場での様々な出来事>を共有しつつ、未来を創造するという実験。その手法の総称として用いている<meeting>とは、新しい芸術の提示、考察、検証、記録を課題とし、芸術のみならず社会を構成する多様多層的な出来事が遭遇し、合流するという意味を含んでいる。
 そしてこの長き旅の出発点が「vol.00『臨界の芸術論』」である。
 シンボリック・オブジェの巨大ミラーボールの点灯で幕は明け、実行委員によるフォーラム→各委員がゲストを招き独自のテーマについて語る真夜中ミーティング→映画「鉄西区」の上映によるチルアウト→多才なゲストによる昼と夜のメインシンポジウム→工場地帯を一望するクルージング→ライブ、DJ、パフォーマンス、映像で構成するクラブスタイルのパ−ティ。そして、36時間のホスピタリティーを演出する「屋外リビングルームゲスト」やすべての出来事を映像やテキストに記録したり、独自のアンケートを実施するドキュメントプロジェクトが展開された。夜をメインとした長時間におよぶ無謀なプログラムにも関わらず、来場者は絶えることなく訪れ、各プログラムの殆どが定員を上回る盛況ぶり、広大な敷地内の彼方此方で様々な対話が繰り広げられていった。
 
このvol.00は、いまだかつてないアートの饗宴の根底にある知性と感性のトレーニングに耐えうる人々によって、長期にわたる方向性と未来像を探るコンセプトミーティングの場として機能し、歓喜した言葉の数々を拾い上げ、咀嚼・消化してvol.01に転用される。
 
多ジャンルの知的産業者が集う対話空間の演出という新たな芸術スタイルで幕を開けたかつての産業遺産は、多様な実験と検証の輪廻により、元来の用途美と時間の蓄積によってアーティスティックな趣を保有する工場長屋の表層が文化遺産へと転生する日も遠くない。つまり、この臨海工業地帯というトポスのポテンシャルが現象を生み出し、様々な謎や問いかけが生産され続け、それに感応する究極の【個】の人知が集う限り、次代の価値観を築く新たなジェネレーションが臨界点を超越していくに違いない。
会期と内容
■会期:2004年9月24日(金)17:00PM〜26日(日)05:00AM
■会場:名村造船所跡地(大阪市住之江区北加賀屋4-1-55)
■ゲストパネリスト:浅田彰(評論家)、五十嵐太郎(建築批評家)、岡崎乾二郎(美術家・美術評論家)、小関道幸(TVプロデューサー)、甲斐賢治(NPO remo代表理事、NPO recip理事)、小林昌廣(京都造形芸術大学教授)、椿昇(現代美術家)、橋爪紳也(建築史家)、服部滋樹(”graf”代表)、松本雄吉(劇団維新派主宰) [敬称略五十音順]
■クラブイベントNAMURANAITE (9月25日22:00PM〜翌05:00AM)
DJ:TOWA TEI DJ Shinomiya 南琢也(softpad)
■コラボレーション・ライブ:REI HARAKAMI(SUBLIME RECORDS)+高谷史郎(DUMB TYPE)
パフォーマンス:NADJA
■屋外リビングルーム プロデュース
“graf”decorateive mode no.3 design products.inc
■ドキュメンテーション プロデュース
NPO recip / 地域文化に関する情報とプロジェクト
■実行委員会
小原啓渡、松尾 惠、高谷史郎、木ノ下智恵子、山本ヒサエ、中川みとの、虎石 薫
■NAMURA ART MEETING実行委員会事務局
〒604-8082 京都市中京区三条通御幸町角1928ビル4Fアートコ
ンプレックス1928内
TEL:090-8467-1406
E-MAIL:info@namura-art.com
URL=http://www.namura-art.com
学芸員レポート
 「NAMURA ART MEETING」というライフワークに出会って、公私の区別なく、アートの魔力に翻弄されていますが、芸術の秋本番を迎えて、次なる仕掛け事です。
 神戸アートビレッジセンター(通称KAVC)では、未来を担う若い世代のアーティストに注目し゛今を生きる″同時代の意識を象徴した展覧会「神戸アートアニュアル」を1996年より開催しています。ここでは、自己プロデュース能力のトレーニングの機会として独自のプログラムを実施しています。出品作家はサブタイトル、印刷物、関連企画の内容やゲストなど展覧会を構成するあらゆる要素に意識を反映させ、また、インタビュービデオやプレゼンテーションによって自らの制作態度を見つめ直していきます。
 今年は10名の出品作家が集い、度重ねるミーティングの中で「トナリノマド」という言葉を紡ぎだしました。これはもちろん『となりの窓』とも読めます。「窓」は若き美術家たち、それぞれの表現や出品の象徴でもあり、未来に開かれたお互いの存在でもあります。そして「ノマド」(遊牧民)のように放浪しながら冒険する強い意志を持ち、未だ定まらない自らのありようを大切にしている彼らの行方を示唆した言葉とも重ねられています。「隣」という自分の周りにある様々な現実から、何を選びとり、どのように表現していくのか。本展で出会い、となり合う表現者たちは、自らの窓を開け閉めながら、他者とのコミュニケーションを続けています。
 様々な作品群に加え、作家のプレゼンテーション、ゲストトーク、「アーティストインタビュービデオ」の放映と出品作家の来館など、多彩なプログラムを実施します。また、本企画の裏方として深く関わるインターンスタッフと企業メセナの方々によるセミナーや独自の印刷物の発行など展覧会の舞台裏を知る機会もご提供しています。
 作り手、つなぎ手、受け手、全ての人々が自由に出入りすることのできる『トナリノマド』。
会場で様々な窓の内と外を覗くうちに、あなた自身が誰かにとっての「となりの窓」であることに気づくかもしれません。どうぞ、覗きに来てください!
会期と内容
■会期:10月23日(土)〜11月21日(日)
入場無料(10:00〜19:00 最終日は17:00まで)
■会場:1F/1room、KAVCギャラリー B1/KAVCシアター他
主任実行委員:渡辺信明(美術家)、デザイナー:飯川雄大
■出品作家:大庭大介、金沢寿美、小橋陽介、中岡真珠美、仲野祥代、久門剛史、藤部恭代、牧瀬奉行、安冨洋貴、矢部奈桜子      
■インターンスタッフ:阿部真太郎、 今川里華、 木近 功、 小浦沙耶歌、 清水麻里、多田智美、 山口里美、 吉田 裕、 渡辺純子

◆関連企画(【プログラムB、C】要電話予約078-512-5500)
【プログラムA 】出品作家プレゼンテーション(入場無料・定員70名)
10月31日(日)14:00〜 KAVCギャラリー
【プログラムB】ゲストトーク
リハーサル室2(定員70名 参加費/一日1000円 30分前から受付)※定員になり次第締め切り
B-1 11月7日(日)17:30〜 おかけんた(漫才師・アート愛好家)×小崎哲哉(『ART iT』『REALTOKYO』発行人兼編集長) 
B-2 11月14日(日)14:00〜 窪田研二(水戸芸術館現代美術センター学芸員)
B-3 11月14日(日)17:30〜 伊藤存(美術作家)
【プログラムC】インターンスタッフ企画「メセナって何?」
11月7日(日)14:00〜 1room (定員30名、参加費500円)
パネラー 根本ささ奈(アサヒビール(株))、山本真由美(トヨタ自動車(株))、吉村真也(TOA(株))、出品作家
ナビゲーター インターンスタッフ 

◎10月31日(日)催し物終了後、レセプションパーティーを予定。
◎展覧会場と京都/MEDIA SHOPで「アーティストインタビュービデオ」を放映。
[きのした ちえこ]
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