「新しい視覚」。1920〜1940年代の両大戦間に展開された写真運動で、直接はL・モホリ=ナギが1928年に著した同名の美術教育書(1949年に改訂)に由来する。この時期、ドイツではバウハウスが、ソ連ではロシア構成主義が興隆し、政治的緊張や社会的変化などを含んだ新たな芸術・教育運動が展開されていたが、新しい視覚言語を追及するその姿勢は、当然のように写真にも及んだ。結果、審美的なピクトリアリズムとも、直截的なストレート・フォトグラフィとも異なる新しい写真表現が模索されることになり、その探求の過程で、コラージュ、フォトグラム、フォトモンタージュといった画期的な写真技法が開発された。「ニュー・ヴィジョン」とはその探求の総称だが、社会運動との深い結びつきは、当然プロパガンダ芸術としての色合いを強いものとしている。芸術運動としての「ニュー・ヴィジョン」は、しばしばノイエ・ザハリヒカイトとの親近性が指摘される。「ニュー・ヴィジョン」の成否はいかにして他ジャンルの表現の成果を貧欲に吸収するかに左右された。代表的実践者と目されるE・リシツキーやA・ロドチェンコらの活動はそれを物語っている。
(暮沢剛巳)
関連URL
●E・リシツキー http://www.getty.edu/research/tools/digital/lissitzky/
●A・ロドチェンコ http://www.schicklerart.com/html_exhibitions/aleksandr_rodchenko/rodchenko_main.html
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