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静物画 Still Life


西洋画の1ジャンル。一般に動かぬ事物、例えば花、果実、猟で獲られた動物、パン、ワインなどの食品、食器、楽器、書物などを主体的に描いた絵画を指す。語源的にはゲルマン語系のstilleven(蘭)、stilleben(独)、still life(英)と、ラテン語系のnatura morta(伊)、nature morte(仏)の2系統がある。stilleven(直訳すれば動かざる生命)は17世紀中頃オランダで現われた表現であり、事物の静止性という側面を取り上げている。それに対しnatura morta(直訳すれば「死せる自然」)は18世紀イタリアでの造語であり、当時アカデミズムにより上位のジャンルとされていた歴史画、肖像画がnatura vivente(生きている自然)と呼ばれていたのに対して、静物画を蔑視的にこう呼んだのである。
静物は古代ローマの壁画に部分的に描かれている。中世ではほとんど見られなかったが、14世紀末頃から装飾的添え物として、あるいは宗教上のアレゴリーの要求から描かれだした。精密な写実的描法を旨とする17世紀オランダにおいて静物画は1ジャンルとしてその地位を確立する。18世紀にはシャルダンが登場して静物画の評価を高めるのに大きく貢献した。19世紀後半になって主題の意味にとらわれず、画面上での構成を重視する態度が現われてきた。セザンヌはこのような観点から近代の静物画に大きな役割を果たし、そこからフォーヴィズムキュビスムにおける静物をいったん解体して画面上で再構成する手法が用意されることとなる。またキュビスムにおいて静物画の中に新聞や壁紙など文字を含む印刷物を取り込んだパピエ・コレが現われた。これは20世紀の情報化された社会を反映する重要なモティーフとして、シュルレアリスムの画家たちにコラージュなどへの展開を見せながら用いられることとなる。その一方でゴッホの「靴」をハイデガーが人生そのものとして解釈したように、静物画は近代絵画のもうひとつの主流である象徴的傾向と結びつけて解釈されることもある。

(山口美果)

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