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写真アーカイヴ

Photo-archives
更新日
2024年03月11日

アーカイヴとは、古文書や公文書の集積、およびそれらを保管する場を指す。文字資料に加え、非文字資料、つまり写真や映像による記録も含まれる。写真によるアーカイヴの例として、アルフォンス・ベルティヨンによる司法写真が知られている。現代美術においては、コンセプチュアル・アートやパフォーマンス・アートといった領域で、写真による記録を作品として、あるいは作品の一部の要素として用いる傾向が1960年代末から顕著になった。写真というメディア自体、記録し蓄積するというアーカイヴ的機能を持つため、1990年代から流行の兆しを見せた「アーカイヴァル・アート」においても作品の主要な素材として用いられた。また「ヴァナキュラー写真」への注目は、「ファウンド・フォト」と呼ばれる手法が注目された時期と重なっているのだろう。日常生活のなかに埋もれた何気ない写真、あるいは失敗写真とも言うべき、いわゆる「アート」ではない写真を再度発見し、作品に取り込んでゆく手法は、いまや現代美術の文脈では一般的である。写真の集積は、デジタル化の波にのまれ、従来のアーカイヴ(公文書館)からネット上へと、今後居場所を移してゆくのかもしれない。

補足情報

参考文献

『京都美学美術史学』第6号,「アーカイヴという視点、アーカイヴを眺める視点:一九六〇年代以降の写真アーカイヴァル・アートをめぐる試論」,中村史子,京都大学,2007
『October』Vol. 39,Winter,pp. 3-64,「The Body and the Archive」,Allan Sekula
『Deep storage: collecting,storing,and archiving in art』,Ingrid Schaffner and Matthias Winzen(ed.)
『The Archive』,Charles Merewether(ed.),MIT Press,2006
『Archive Fever: Uses of the Document in Contemporary Art』,Okwui Enwezor,Steidl,2008
『The big archive: art from bureaucracy』,Sven Spieker,MIT Press,2008