2019年09月15日号
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《ウォークアラウンド・タイム》マース・カニングハム

Walkaround Time, Merce Cunningham

アメリカの振付家でダンサーのマース・カニングハムが1968年にニューヨークで上演した代表的作品。本作は、美術作家マルセル・デュシャンへのオマージュ作品として知られている。デュシャンによる《大ガラス》のイメージを参照したキューブ状の透明なオブジェ(制作ジャスパー・ジョーンズ)が舞台上を埋め、二部構成の一部と二部のあいだには、もともと1924年の《本日休演》というフランシス・ピカビアによるバレエ作品の幕間を飾るものであったデュシャン出演の映画『幕間』(1924)へのオマージュとして、幕間の休憩がいわば「幕間というもののレディ・メイド」としてはさまれた。冒頭の準備体操の場面もまた、カンパニーが日々行なっているクラス(準備体操)をレディ・メイドとして行なったものと考えられている。速い動作と静止を繰り返すダンサー、キャロリン・ブラウンのソロ場面は同じくデュシャンの《階段を降りる裸体No.2》を連想させた。本作は、マーサ・グラハム舞踊団に在籍していたこともあるカニングハムが、音楽家ジョン・ケージとの親交のなかで前衛的な芸術表現に魅了され、その可能性を探究した道程におけるひとつの到達点と言える。本作が発表されたのは、すでにカニングハムより若い世代、例えばジャドソン・ダンス・シアターのメンバーたちがポストモダン・ダンスと呼ばれる独自のアプローチである程度の成果を積み上げていた時期にあたる。日常的な動作を舞台に持ち込むレディ・メイドのアプローチは、両者ともに見られる表現である。とはいえ、カニングハムのダンサーたちが示す独特のフォルムやテクニックは、ジャドソン・ダンス・シアターの身体運動とはかなり異質のものであった。

著者: 木村覚

参考文献

  • Judson Dance Theater: Performative Traces, Ramsay Burt, Routledge, 2006
  • Merce Cunningham: The Modernizing of Modern Dance, Roger Copeland, Routledge, 2004

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