2019年09月15日号
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《ハムレットマシーン》ハイナー・ミュラー

Die Hamletmaschine(独), Heiner Müller

ドイツの劇作家・演出家のハイナー・ミュラーがシェイクスピアの《ハムレット》をもとに1977年に発表した彼の代表作。マティアス・ラングホフと共同で《ハムレット》を翻案・改作する作業を進めるなかで、《ハムレット》を破壊的に再創造することによって本作は書かれた。初出は『テアーター・ホイテ』で、2頁あまりを占めるだけの短いテキストであった。原作にあった対話は消え、代わりにモノローグ的な断片ばかりとなり、また《ハムレット》だけではなく、ヘルダーリン、アルトー、ドストエフスキー、カミングスなど多数の演劇作品、詩、小説などからの引用やイメージが盛り込まれた。《ハムレットマシーン》という名はマルセル・デュシャンの画集から挿絵を入れようと考えているなかで生まれたとミュラーが述べているように、「マシーン」のイメージの源泉にはデュシャンの「独身者の機械」があった。また自伝『闘いなき戦い』には、文学機械を論じたドゥルーズ=ガタリ『カフカ』(1975)からの影響が示されている。本作を含めたシェイクスピア改作ものの著作を刊行する際に、ミュラーがそれをアンディ・ウォーホルの「ファクトリー」に倣って『シェイクスピア・ファクトリー』と名付けたことも、ミュラーの「マシーン」観を考えるうえで示唆的である。これまで、ジャン・ジュルドゥイユ(1979)、ロバート・ウィルソン(1986)らによって上演が試みられた。90年には、東ベルリンのドイツ座で、ドイツが統一へ向けて動いていた最中、本作と《ハムレット》を合体させた作品《ハムレット/マシーン》が初演された。

著者: 木村覚

参考文献

  • 『ハムレット・マシーン シェイクスピア・ファクトリー』, ハイナー・ミュラー(岩淵達治、谷川道子訳), 未来社, 1992
  • 『闘いなき戦い ドイツにおける二つの独裁下での早すぎる自伝』, ハイナー・ミュラー(谷川道子ほか訳), 未来社, 1993(原著1992)
  • 『ハイナー・ミュラーと世界演劇』, 西堂行人, 論創社, 1999
  • 『カフカ マイナー文学のために』, ジル・ドゥルーズ、フェリックス・ガタリ(宇波彰、岩田行一訳), 法政大学出版局, 1978

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