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《土方巽と日本人 肉体の叛乱》土方巽
Hijikata: Rebellion of the Body, Tatsumi Hijikata
暗黒舞踏の創始者・土方巽が暗黒舞踏派結成11年記念の1968年10月9-10日に、日本青年館にて上演した代表的ソロ作品。演出・振付・出演・土方巽、舞台美術・中西夏之、衣装・小道具・土井典、ポスター・横尾忠則。作品は、「プロローグ」「馬鹿王の行列」「花嫁」「男根」「赤ドレス」「スパニッシュ」「ワンピース」「水兵」「少女」「昇天」「エピローグ」とパート分けされている。神輿状のリアカーに乗って登場すると、生きた鶏が吊るされた真鍮板以外なにもない舞台上で土方は、ときに土井制作の男根模型を身につけ、ときにフラメンコ・ダンサーのようなロングドレスで手足を細かく動かし、ときに着物姿で少女になり踊った。客席の上でロープに吊るされた土方が退場して、終幕。賛否両論が巻き起こり、観客の見守る中「徹底的な愚行がクソマジメな表情で」行なわれたことを「圧巻」と美術評論家・岡田隆彦が賞賛する一方、舞踏家・笠井叡は舞踏それ自身を否定する土方らしい肉体が不在であったと批判、前衛芸術家・刀根康尚は中西の美術と土方の行為という還元不可能なもの同士の闘いや相互拘束が「馬鹿王の行列」のパート以外には見られなかったと評した。
著者: 木村覚
参考文献
- 『土方巽の舞踏 肉体のシュルレアリスム 身体のオントロジー』, 川崎市岡本太郎美術館+慶応義塾大学アート・センター編, 慶応義塾大学アート・センター, 2004
- 『肉体の叛乱 舞踏1968/存在のセミオロジー』, 慶応義塾大学アート・センター編, 慶応義塾大学アート・センター, 2009
- 『土方巽全集 Ⅱ』, 種村季弘+鶴岡善久+元藤燁子編集, 河出書房新社, 1998
参考資料
- 「白いテーブルクロスがふれて」, 土方巽、中西夏之