2019年12月01日号
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「すべては建築である」ハンス・ホライン

“Alles ist Architektur”, Hans Hollein

1968年、オーストリアの『バウ(BAU)』誌にて発表されたハンス・ホラインによる宣言。五月革命を頂点とした60年代後半の既成の価値観への異議申し立て、ル・コルビュジエとミース・ファン・デル・ローエの死(それぞれ65年、69年)に象徴される近代の終焉、同時代のアートの動向、およびメディアの発達やポストモダン文化の萌芽といった時勢の変化を受けて、旧来の建築の閉鎖性を打破し、建築概念の拡張を主張した。ホラインは宣言の冒頭で、従来の建築伝統の妥当性は失われたと述べ、建物そのものではなく、主体を取り囲み影響を与える環境こそが建築であると言う。それとともに、クリストやクレス・オルデンバーグなどのアート作品の図像から、通常建築とはみなされない要素を取り上げ、それがいかに建築であるかという文章を付して羅列的に掲載した。ホラインのプロジェクト「ノン・フィジカル・エンヴァイラメンタル・コントロール・キット」(1967)は、一粒の錠剤を服用することで患者の環境が改善されることが、すでに建築的な行為だということを示している。また、ホラインとの共同を繰り返した建築家ワルター・ピッヒラーは内部にディスプレイを搭載したヘルメットを発表した。これは装着することで実際に居る場所と異なる体験を得られる装置である。実体を持つ建築物に依存しないこうした思考は、テレビなどの新しいメディア環境の影響を大きく受けている。「すべては建築である」という言葉は、物理的な存在としての建築あるいは技術的な制約から解き放たれ、主体の体験に重きを置いた新しい建築概念への突入を示唆するものであった。

著者: 江川拓未

参考文献

  • 『美術手帖』1969年12月号, 「あらゆるものが建築である」, ハンス・ホライン, 美術出版社
  • 『建築の解体 一九六八年の建築状況』, 磯崎新, 鹿島出版会, 1997
  • 『終わりの建築/始まりの建築 ポスト・ラディカリズムの建築と言説』, 五十嵐太郎, INAX出版, 2001

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