2019年09月15日号
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「アンフォルム(フォームレス):手引書」イヴ=アラン・ボワ&ロザリンド・E・クラウス

“Formless: A User's Guide”, Yve-Alain Bois & Rosalind E. Krauss

美術史家・美術評論家のイヴ=アラン・ボワとロザリンド・クラウスの共同キュレーションによって、パリのポンピドゥー・センターで1996年5月22日から8月26日にかけて開催された展覧会「アンフォルム 使用の手引き」のカタログ。同年にフランス語版、翌97年に英語版、また2011年には加冶屋健司、近藤學、高桑和巳による日本語版が刊行されている。クラウスは、戦後のアメリカ合衆国でクレメント・グリーンバーグにより精緻に理論化されたフォーマリズム批評に対して、精神分析や言語学といった他領域の理論を導入し、フォーマリズム批判を展開していった人物であり、その活動の拠点となった『オクトーバー』誌では、ボワもクラウス同様編集委員を担っている。そうした背景のなか、フォーマリズム的美術史観を逸脱する可能性を、両者がG・バタイユの活動に見出したことが本展の要因と言えよう。バタイユは自身が編集に関わった『ドキュマン』誌において低級唯物論の理論的装置として「アンフォルム」を提唱したが、クラウスとボアはそれを破壊的な作用をもつ「操作」、または「機能」として用いた。展覧会カタログの名称が指し示す通り、本書はマニュアル、手引きとしての性質が強調されており、「低級唯物論」「水平性」「パルス」「エントロピー」という四つのカテゴリーが設定されている。また、アルファベット順に28項目が取り上げられ、事典としての仕様になっている。クラウスとボアは、安定的なゲシュタルトを生成するモダニズムの純粋な視覚がもつ「垂直性」に抑圧された「水平性」を見出すなど、アンフォルムの操作によって、それ自体が二項対立の図式に回収されてしまうという危険性を孕みながらも、作品の物質性や構造の一義的解釈を否定し、形式の解体における多義性の抽出を試みたと言える。

著者: 森啓輔

参考文献

  • 『アンフォルム 無形なものの事典』, , イヴ=アラン・ボワ、ロザリンド・E・クラウス(加冶屋健司、近藤學、高桑和巳訳), 月曜社, 2011
  • 『美術フォーラム21』第2号, 「ロザリンド・クラウスとフォーマリズム・イデオロギー」, 平芳幸浩, 醍醐書房, 2000

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