2019年06月01日号
次回6月17日更新予定

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「サイバネティック・セレンディピティ」

“Cybernetic Serendipity”

1968年にロンドンのICA(Institute of Contemporary Arts)で開催された初のコンピュータ・アートによる大規模かつ複合的な展覧会。当時ICAのアシスタント・ディレクターであったヤシャ・ライハートが中心となって企画を進めた。同展の発端はシュツットガルト大学教授のマックス・ベンゼからライハートへの助言による。展覧会の名称となったサイバネティクスは、ノーバート・ウィーナーが提唱した制御と通信の理論に由来する。セレンディピティとは偶然に思わぬ発見をする能力や幸運を意味する。同展の趣旨として「人間とエレクトロニクスがマシーンをコントロールし、コミュニケーションすることによって幸運を作り出す才能の発見」「どのように人間がコンピュータと新しいテクノロジーを利用して、創造性と創意工夫の視野を広げられるかの実証」が掲げられた。
同展の内容は、(1)アーティストによる作品(コンピュータによるグラフィックやアニメーション、音楽、詩)と、(2)エンジニア、科学者、メーカーによる技術的な成果およびデモンストレーションに大別することができるが、これらの二つを同列に扱ったのが特徴である。会期中、多数の講演会、パフォーミング・アート、コンサートなどが開催された。ICAでの会期終了後、規模を縮小しつつワシントンDCのコークラン・アート・ギャラリーおよびサンフランシスコのエクスプロラトリウムの2会場を巡回した。それまで制作にコンピュータが関与した作品は旧来からの芸術とは異なるものと考えられていたが、相互を関係づける結節点となり、今日に至るメディア・アートの起点となった展覧会である。

著者: 大泉和文

参考文献

  • Cybernetic Serendipity - The Computer and The Arts, Jasia Reichardt, ed., Studio International, 1968
  • Cybernetics, Art and Ideas, Jasia Reichardt, ed., Studio Vista, 1971
  • The Computer in Art, Jasia Reichardt, ed., Studio Vista, 1971
  • White Heat Cold Logic: British Computer Art 1960-1980, Paul Brown,ed., The MIT Press, 2009

参考資料

  • 『Cybernetic Serendipity Music』, V.A., ICA, LP, 1968

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