2019年06月15日号
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「ザ・ヴァラエティ・シアター」フィリッポ・トンマーゾ・マリネッティ

“The Variety Theatre”, Filippo Tommaso Marinetti

未来派の主導者である詩人F・T・マリネッティが1913年に書いた、未来派として最初期の演劇をめぐる論考。しばしば宣言として扱われている。過去の作品の模倣ないし盗作、あるいは日常の単なる写真的再生産でしかなくなった演劇を批判すべく、マリネッティはヴァラエティ・シアター(ミュージック・ホール、キャバレー、ナイト・クラブ、サーカスなど)を称揚し模範としたうえで、「驚異の演劇」「記録を打ち立てる演劇」「身体―狂気の演劇」へとそれを変身させようと謳った。マリネッティはヴァラエティ・シアターを称揚する理由を19か条にまとめている。それによると、ヴァラエティ・シアターは非伝統的、非アカデミックであり、喜劇的な効果や官能的な刺激、想像力に富んだ驚異をもって人々を楽しませる。またそれは、新しい感性が沸騰するるつぼであり、危険を前にしながら困難に打ち勝ち、速さや強さを発揮して身体運動の記録を打ち立てるヒロイズムの学校とも呼ばれるものである。またそれは、内面生活の表現であるこれまでの演劇とは異なり「行為、ヒロイズム、器用さ、空中での生、本能・直観の威信」を称揚しており、彼が「身体-狂気」(body-madness)と呼ぶ非精神的で純粋に身体的な表現の可能性を推し進めている。さらにマリネッティは、ヴァラエティ・シアターのうちに潜むあらゆる論理を廃棄し、その伝統的なあり方を退けることによって、ヴァラエティ・シアターを未来派演劇へと変身させるべく、具体的なアイディアを挙げている。例えば、観客に驚異を与えるために座席に接着剤を塗り、またひとつの座席に10人分のチケットを売ること、またすべての古典芸術を混ぜ合わせることなどが推奨される。マリネッティに先んじて、ヴァラエティ・シアターを評価し、芸術との融合を唱導した者には、O・パニッツァやG・フックスがおり、また同時代ではメイエルホリドが知られている。なお、参考文献に挙げたカービィの著作にこの論考の英訳が掲載されている(p. 179-186)。

著者: 木村覚

参考文献

  • Futurist Performance, Michael Kirby, PAJ Publications, 1971
  • Italian Futurist Theatre, 1909-1944, Günter Berghaus, Oxford University Press, 1998

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