2019年06月15日号
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「ダイヤのジャック」

“Бубновый валет”(露), “Jack of Diamonds”(英)

1910年から、モスクワにおいて開催され、ロシア・アヴァンギャルドの活動の嚆矢となった展覧会。ピョートル・コンチャロフスキイ、イリヤ・マシコフ、アリスタルフ・レントゥロフらが11年に結成したグループをも指す。最初の展覧会はミハイル・ラリオーノフ、コンチャロフスキイ、マシコフ、ナターリヤ・ゴンチャローワらによって企画された。初期はモスクワの前衛的な画家たちが出展したが、後にペテルブルクやロシア各地、さらには外国からの参加が増加し、10年代には左翼的な芸術運動に関与する画家たちが幅広く活動する場となった。19世紀のアカデミズムや写実主義、20世紀初頭の象徴主義からの離脱が目指され、展覧会は革命後の17年12月まで継続した。「ダイヤのジャック」という名称は、懲役囚(その多くは政治犯)が着用する上着の背に貼り付けられていたダイヤ形の印に由来するとも、いかさま師を意味する隠語とも言われている。参加した画家の傾向は多様であり、レントゥロフ、コンチャロフスキイ、マシコフ、ロベルト・ファーリクらは「セザンヌ主義者」として紹介され、ゴンチャローワとラリオーノフはプリミティヴィズム様式の絵画を展示した。ラリオーノフとゴンチャローワが11年末に決裂すると、マレーヴィチがその後の芸術運動を牽引した。展覧会のみならず、討論会やマニフェストの発表、画家たちによるパフォーマンスなども行なわれ、しばしば芸術家たちの激しい議論の場となった。

著者: 河村彩

参考文献

  • 『ロシア・アヴァンギャルド』, 亀山郁夫, 岩波新書, 1996
  • 『夢見る権利 ロシア・アヴァンギャルド再考』, 桑野隆, 東京大学出版会, 1996
  • 『ロシア・アヴァンギャルド 未完の芸術革命』, 水野忠夫, PARCO出版, 1985
  • 『ロシア・アヴァンギャルド 1910-1930』, ステファニー・バロン、モーリス・タックマン編(五十殿利治訳), リブロポート, 1982
  • 『ロシア・アヴァンギャルド芸術 理論と批評 1902-34年』, J・E・ボウルト編(川端香男里訳), 岩波書店, 1988

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