2019年06月15日号
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「パフォーマティヴ・アクトとジェンダーの構成」ジュディス・バトラー

“Performative Acts and Gender Constitution”, Judith Butler

1988年、アメリカの思想家ジュディス・バトラーが『シアター・ジャーナル』誌に発表した論文。バトラーによると、ジェンダーというアイデンティティは、さまざまな行為の原点となる安定したものというより時間の流れのなかでかりそめに構成されるものであり、したがって、行為をある一定のかたちで反復して遂行することで作り出されるものにすぎない。こうした考察を通してバトラーは、フェミニズム理論の立場から、ジェンダーをさまざまな身振り、動き、演技の遂行が構成するものとみなした。そうであるにもかかわらず人がジェンダーをひとつの実体として考えてしまうのは、ジェンダーを構成する働きが同時にその構成するという事態を隠蔽する機能を有しているからである。バトラーはこうした事実が露呈する出来事として、異性装者が社会空間で価値評価にさらされる場面を例に挙げる。ジェンダーの演じ方を間違えた彼/彼女はしばしば、露骨にまた遠回しに社会から処罰を受けるが、こうした処罰を受ける事態こそ、ジェンダーが実体あるものではなく、むしろたんなる社会的な強制に過ぎないことを明かすものである。そう考えたバトラーは、価値転倒的なさまざまな種類の行為/演技の遂行によって文化的な場が拡張されることを求めた。例えば、社会空間では非難を受ける異性装者が、劇場空間では喝采を浴びることもあるとして、社会空間と劇場空間の違いも指摘した。バトラーによるパフォーマティヴィティの考えは、ペギー・フェランらフェミニズム系の演劇理論家に大きな影響を与えるなど、身体芸術の分野においてしばしば参照されている。

著者: 木村覚

参考文献

  • Theatre Journal, 40, 4 December 1988, “Performative Act and Gender Constitution: An Essay in Phenomenology and Feminist Theory”, Judith Butler, The Johns Hopkins University Press
  • 『シアターアーツ』Vol.3、No. 2, 「パフォーマティブ・アクトとジェンダーの構成」, ジュディス・バトラー(吉川純子訳), 晩成書房, 1995
  • The Twentieth-Century Performance Reader, Michael Huxley and Noel Witts eds., Routledge, 1996

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