2019年09月01日号
次回9月17日更新予定

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「フルクサス・フィルム」

“Flux Film”

1960年代に制作された、フルクサスのアーティストによる映画アンソロジーを指す。フルクサスとはジョージ・マチューナスによって61年に開始された広範な領域に及ぶ芸術運動である。フルクサスのアーティストたちは、マルティプルの販売やハプニングなどによって、芸術の領域を逸脱した多くの試みを行なっていたが、そのなかでフィルム作品も制作していた。このような映画は、マチューナスによって「フルクサス・フィルム・アンソロジー」としてまとめられている(複数のヴァージョンが存在する)。参加した主なアーティストは、ナム・ジュン・パイク、ディック・ヒギンス、マチューナス、塩見千枝子(允枝子)、オノ・ヨーコ、ジョー・ジョーンズ、ヴォルフ・フォステル、ジョン・ケール、ジョージ・ランドウ(オーウェン・ランド)、ポール・シャリッツ、ミラン・クニザックなどである。これらのアーティストは、ランドウとシャリッツを除いて、本来は実験映画作家ではない。以下、それぞれの内容について簡単に言及しておく。白コマ(抜け)のフィルムに付着した微細な埃を見せるパイクの『Zen for Film』。リーダーのカウントによって、その物理的な時間の長さを測るマチューナスの『10 Feet』や『1000 Frames』。微笑む表情をスローで見せる塩見の『Disappearing Music for Face』。さまざまな人の尻を撮影したオノの『Four』。口から吐かれたタバコの煙をスローで見せるジョーンズの『Smoking』。TV映像を変調させたフォステルによるヴィデオ・アートの先駆的作品である『Sun in Your Head(Television Decollage)』。激しいフリッカーがイメージや単語を伴って立ち現われるシャリッツの『Wrist Trick』や『Word Movie』。カメラの前でパフォーマンスを行なうクニザックやベンなど。これらのフィルムは短いものなら数秒の長さであり、コンセプチュアル・アート的な作品が揃っている。フルクサスの映画はハプニングを記譜したものである「スコア」と同列でとらえられる、芸術的・文化的制度を逸脱した試みであり、上映においても映画の固定的なシステムを問い直すものであった。現代美術と実験映画のコンテクストが交差する地点で生まれたフィルム制作の試みとして重要である。

著者: 阪本裕文

参考資料

  • 『Flux Film Antorlogy』(PAL盤), V.A., Re-Voir, DVD, 2010

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