2019年12月01日号
次回12月16日更新予定

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「写真に帰れ」伊奈信男

“Shashin ni Kaere”, Nobuo Ina

評論家の伊奈信男が1932年に『光画』の創刊号に書いた論文。伊奈が第2号から同人に加わる『光画』のマニフェストとも言うべきこの論文は、日本における近代写真批評の嚆矢となった。写真の独自性を主張する内容となっており、「『芸術写真』と絶縁せよ。既成『芸術』のあらゆる概念を破棄せよ。偶像を破壊し去れ! そして写真の独自の『機械性』を鋭く認識せよ!」と絵画を模倣するピクトリアリズムの写真が社会的実用性の欠如ゆえに厳しく批判される。『光画』のイデオローグとなる伊奈が、新しい芸術としての写真の美学の中心に据えるのは、カメラやレンズの「機械性」であり、そうした機械を通して事物を表現することこそが、写真の本質であると言う。そして、機械性の認識から生まれた新しい写真表現の形式を以下の3つに分類している。それは対象の新しい美を表現しようとする写真、時代の記録や生活の報告としての写真、光による造形としての写真である。『光画』の写真家たちに代表される「新興写真」とその後の「報道写真」を橋渡しをする写真論となっている。

著者: 小原真史

参考文献

  • 『「芸術写真」とその時代』, 飯沢耕太郎, 筑摩書房, 1986

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