2019年08月01日号
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「展開された場における彫刻」ロザリンド・E・クラウス

“Sculpture in the Expanded Field”, Rosalind E. Krauss

自身も編集委員を務める批評誌『オクトーバー』に初出した美術批評家ロザリンド・E・クラウスによる1979年の論文。70年代初頭のアメリカ美術において、風景や建築へと介入していくような作品群が展開され、それに応じて「彫刻」というカテゴリーが無際限に拡大していく状況が生まれた。こうした事態に対しクラウスは、クライン群と呼ばれる四角形のダイアグラムに「風景」「建築」「非-風景」「非-建築」の四項を据え、そこに従来の彫刻の枠組みに収まらない作品を位置づける。それはジャンルの閉域に忠実なモダニズムの論理ではなく、彫刻というジャンルの無際限な変化を許容するのでもない、彫刻というカテゴリーの論理的展開の場においてさまざまな作品群を捉えなおす試みだったと言える。クラウスによれば、かつて彫刻は、特定の場や出来事と結びついた記念碑としての意味をもった。しかし近代彫刻は、固有の場との結びつきから解き放たれ、それによって作品の自律性を獲得していく。しかし60年代以降、ジャンルによる限定が崩壊し、70年代に至ってさらに、ギャラリーや美術館といった枠を超えて成立する作品が登場し始める。現在ではサイト・スペシフィックやアースワークといった言葉で語られる作品群を、モダニズムの論理からの連続性と断絶を持つ、彫刻のポストモダンな展開としてクラウスは捉えている。彼女は論文が収められた著書『オリジナリティと反復』の序文で、批評の意義は価値判断にではなく、その方法にある、と提起した。その言葉通りに、独自の方法を通じて作品をマッピングしていく切れ味が際立っており、アースワークなどの理論的評価に先鞭をつけた点でも、大きな意義を持つ論文となった。

著者: 池田剛介

参考文献

  • 『オリジナリティと反復 ロザリンド・クラウス美術評論集』, ロザリンド・E・クラウス(小西信之訳), リブロポート, 1994
  • 『反美学 ポストモダンの諸相』, ハル・フォスター編(室井尚、吉岡洋訳), 勁草書房, 1987

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