2019年06月15日号
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「戦後文化の軌跡 1945-1995」展

“Japanese Culture: The Fifty Postwar Years”

1995年、目黒区美術館、兵庫県立美術館、広島市現代美術館、福岡県立美術館で開催された、敗戦からの半世紀における一国の視覚文化を丸ごと検証しようとする意欲的で壮大、かつ異例の展覧会。美術館が通常扱うジャンルとしての美術を大きくはみ出し、写真、建築、デザイン、ファッション、いけばな、映像、マンガなど幅広い分野に目を配り、それぞれを水平に関連づけて時代性をあぶり出すとともに、総合的な視点から近代日本の自画像を描き出すことを試みた。展示内容は「廃墟からの出発 戦争の傷跡」(1945-50頃)、「成長と抑圧のはざまで」(50年代)、「伝統と革新」(50-60年代)、「展開する前衛 大衆文化の形成」(60年代)、「『近代の懐疑』からポストモダンの時代へ」(70-90年代)の5つの時代と主題で構成され、出品総数は600点をゆうに超える。各ジャンルにおける再評価や新発見の成果も盛り込んでいるが、歴史の新たな読み直しよりも「戦後文化の軌跡」を俯瞰することに主眼を置いた内容となっている。そもそもこの膨大な出品作を一点ずつ詳細に見ることは不可能で、各時代を体感し、その雰囲気を追体験しながらそこにいかなるコードを読み取るかは来館者、もしくはカタログの読者に委ねられている。この展覧会は4つの美術館と朝日新聞社文化企画局および出版局スタッフ、加えて美術史家、アート・ディレクターなど総勢約20人からなる研究会によって準備されており、カタログ冒頭の覚書はこの研究会名義で書かれている点にも、複眼的視点を導入しようとする意図の徹底が示されている。美術以外の文化資料類を旺盛に取り込むことで、ジャンルの分岐、個別化からの脱却を美術館が自ら図った画期的な企画である。

著者: 成相肇

参考文献

  • 「戦後文化の軌跡 1945-1995」展カタログ, , 目黒区美術館他編, 朝日新聞社, 1995

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