2019年06月15日号
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「空虚」展

“La spécialisation de la sensibilité à l'état matière première en sensibilité picturale stabilisée”(仏)

1958年に開催されたイヴ・クラインの「第一物質の状態における感性を絵画的感性へと安定させる特殊化」展の通称。58年4月、パリのイリス・クレール・ギャラリーでの、この「空虚」展に展示されたものは、まさに空虚そのものであった。オープニング・パーティーの招待状、ギャラリー外部の窓、カーテンはクラインが特許をとったインターナショナル・クライン・ブルーでいつものように統一されていたが、展示空間には白いペンキが全面に施されたほかは何も展示されていなかった。パーティーには3,000人が訪れたが、招待状を提示しなければ15フランの入場料が徴収されたため、有料で何もない展示を観せられたことに抗議した人によって警察が出動する騒ぎとなった。ほかにもコンコルド広場にあるオベリスクをブルーにライトアップする当初の計画を、市の許可が下りなかったため断念するなどのアクシデント(2006年に遂行)があったものの、ブルーのカクテルが振る舞われたパーティーは盛り上がり、この展示によってクラインは一躍注目されるアーティストとなった。
以降、展示空間に何も展示しないという方法論は、その解釈は異なるもののさまざまなアーティストによって試みられてきた。2009年にポンピドゥー・センターで行なわれた彼ら「空虚を展示した」アーティストたちの回顧展(「Vides-Une rétrospective」)は、クラインの個展から半世紀が経ったにもかかわらず賛否両論を巻き起こした。この展覧会は9つの展示室を9人の「空虚」アーティストに割り振ったのだが、どの部屋でも何も展示されず、教育というミッションを背負った美術館が鑑賞者に10ユーロを支払わせておいて何も見せないというのはどういうことか、という批判が多くを占めた。一方、コンセプチュアル・アート、極度のミニマリスム、空間への問い、美術館の概念、現代美術の終焉など多くを考えさせる冒険的試みと賛美する声もあった。

著者: 栗栖智美

参考文献

  • 「イブ・クライン」展カタログ, , 高輪美術館ほか編, 高輪美術館, 1985
  • 「ポンピドー・コレクション」展カタログ, , 東京都現代美術館、朝日新聞社、テレビ朝日編, 東京都現代美術館, 1997
  • 『美術手帖』1985年10月号, 特集=パフォーマンス, , 美術出版社,
  • Vides: Une rétrospective, , , JRP-Ringier, 2009

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