2019年08月01日号
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「芸術の非物質化」ルーシー・R・リパード

“Dematerialization of Art”, Lucy R. Lippard

60年代後半の「非物質化」された芸術の傾向を分析した批評家ルーシー・R・リパードの1968年の論考。今日では、コンセプチュアル・アートを理論的に補強した同時代の代表的なテキストのひとつに数えられる。リパードはオブジェの概念を否定するような60年代美術の非物質的な観念性を指摘し、その過程で美術作品は、「非視覚的」で「超概念的」な傾向を強めると述べる。リパードはその例証として多数の作家の名前を挙げているが、おおむねこのテキストのモチーフを与えたのは、彼女と友人関係にあったS・ルウィットの制作であったと考えられる。ルウィットの実践は、数学的定理への関心や幾何学的原理の徹底によってコンセプチュアル・アートとミニマリズムの双方を架橋した。それはリパードが述べるように「観念」を扱う。マイケル・フリードは、ミニマリズムの芸術について、R・モリスやD・ジャッドの作品に見られる観念の実体化こそを批判したが、リパードもまた、モリスのミニマリズムを定義するうえで、その形態的な単純さよりも、むしろデュシャンに通じるような観念性に注目している。つまり、リパードの論考は、「非物質性/超概念性/観念性」という論点から、コンセプチュアル・アートとミニマリズムとの境界が曖昧に受容されていた68年当時の状況を生々しくドキュメントしているのである。

著者: 沢山遼

参考文献

  • Art International, Vol.XII/2, “Dematerialization of Art”, Lucy R. Lippard and John Chandler,
  • Six Years: The Dematerialization of the Art Object from 1966 to 1972, , Lucy Lippard, University of California Press, 1997

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