2019年12月01日号
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『〈帝国〉――グローバル化の世界秩序とマルチチュードの可能性』アントニオ・ネグリ、マイケル・ハート

Empire, Antonio Negri and Michael Hardt

現代イタリアの哲学者ネグリ(1933-)、およびその高弟ハート(1960-)による2000年刊行の共著書。両者は近年頻繁に共同執筆を行なっているが、本書はそのなかでも彼らの代表作のひとつに数えられる。

本書におけるネグリ+ハートの企図は、今日における新たな「帝国Empire」の姿を見極めることにある。今日の「帝国」は、古代ローマのような「帝国」とも、かつてのスペインやイギリスのような植民地主義的「帝国」とも異なり、グローバル資本主義の拡大と、それにともなう従来の国民国家の衰退に根ざしている。つまり、今日の「帝国」的権力はある強大な国民国家を中心に拡張しているのではなく、われわれの日々の生活の中へネットワーク的に浸透しているものなのである。ネグリ+ハートはこの新たな「帝国」の脅威を強く訴えたうえで、それに対する抵抗の可能性を「マルチチュード(群衆)」のうちに見出している(この点については『〈帝国〉』の続篇である『マルチチュード』(2004)も参照のこと)。

今日、現代美術をはじめとする文化的領域においても、ネグリたちの議論は広く共有されているように思われる。2008年には東京芸大ほか数カ所でネグリの来日講演が企画されたが、来日直前に急遽大使館からビザを要求されるという不可解な経緯で来日が断念され、結果的に大きな波紋を呼ぶことになった。

著者: 星野太

参考文献

  • 『マルチチュード(上・下)』, アントニオ・ネグリ、マイケル・ハート(幾島幸子訳), NHK出版, 2005
  • 『〈帝国〉――グローバル化の世界秩序とマルチチュードの可能性』, アントニオ・ネグリ、マイケル・ハート(水嶋一憲ほか訳), 以文社, 2003

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