2019年11月15日号
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『サイレンス』ジョン・ケージ

Silence, John Cage

1961年にウェズリアン大学から刊行された音楽家ジョン・ケージの初の著作集。ケージあるいは実験音楽に関する基礎文献で、彼の音楽観や芸術観、作曲に関する基本的な考え方や美的信念を知ることができる。タイトルの「サイレンス」はケージ特有の多義的な意味を持つ重要な美的概念である。ケージにとって「サイレンス」とは、50年前後に、単なる無音状態ではなく、意図されずに発せられていた音響が存在する状態を意味するようになった。音が存在している状態としての沈黙――語義矛盾にも見えるこの「サイレンス」――は、これ以降のケージの活動を規定するものとなった。本書には主として50年代に発表されたテクストが収められており(30年代2本、40年代2本、50年代15本、60年代3本)、それ以外にも「不確定性」(1958)と名付けられている、クライマックスもオチもない「小咄」が数十本収録されている。この書物に特徴的なのは、収められたテクストのレイアウトである。例えば「音楽の未来:クレド」(1937)は二つのテクストが別々のフォントで混ぜ合わされたものであり、「不確定性」は非常に小さな文字で組まれることで「経典的な性格」を強調したものであり、「無についてのレクチャー」(1959)は朗読パフォーマンスのリズムに合わせて余白も含めてレイアウトされたものである。また、ここに収録された文章の多くは、講演や朗読のために準備されたテクストで、80年代以降のケージが朗読パフォーマンスに傾注していくことを予見していたとも言えよう。本書の日本語訳は1996年に刊行された。人名や作品名、あるいはケージ固有の美的概念などについての詳細で丹念な訳註は、ケージの作品と思想の理解に非常に役立つものである。

著者: 中川克志

参考文献

  • 『ジョン・ケージ著作選』, ジョン・ケージ(小沼純一編), ちくま学芸文庫, 2009
  • 『サイレンス』, ジョン・ケージ(柿沼敏江訳), 水声社, 1996
  • Silence: Lectures and Writings, John Cage, Wesleyan University Press, 1961

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