2019年12月01日号
次回12月16日更新予定

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『サウンド・バイ・アーティスツ』

Sound by Artists

1980年代のサウンド・アートの流行を受け、「音の芸術に関する情報や重要な分析の欠落」(D・ランダー)を埋めるために編まれたアンソロジー本。90年に刊行された。全35本の文章が収録されており、そのほとんどは作家のテクストである。例えば、「楽音」の拡大者としてルッソロやケージ、R・M・シェーファー、ケージ的な実験音楽以降の音楽家であるA・ルシエ、M・ニューハウス、あるいは70年代以降の(音楽家ではない)音を扱う芸術家であるB・ヴィオラ、C・クービッシュ、G・モナハン、R・サマーズ、C・マークレー、H・ウェスターカンプなどのテクストが収録されている。また、理論的なテクストとして、R・コステラネッツやD・カーンのテクストのみならず、サウンド・アートの展覧会カタログに収録されていた重要テクスト(S・デラハンティの「サウンディングス」など)も収録されている。編者のランダー(『サウンドアート』の著者であるA・リクトによれば、80年代半ばに「サウンド・アート」という言葉を使い始めたとされる)は、序文で、ケージ的な実験音楽とサウンド・アートを区別することの重要性を強調している。ランダーは、音楽は音を用いる芸術だが、音を用いる芸術のすべてが音楽であるとは限らないことを強調することで、ケージ的な実験音楽と音楽ではない音を用いる芸術とを区別する。そうすることでランダーは、90年代以降、実験音楽の単なる亜種ではないものとしてサウンド・アートについて語る可能性(その代表はカーンの著作である)を確保したと言えよう。サウンド・アートという領域について考察する際に本書で言及される作品を基準例として設定できるようになったという意味で、このアンソロジーは、サウンド・アート研究の準拠枠を設定した古典と言えるだろう。

著者: 中川克志

参考文献

  • 『サウンドアート 音楽の向こう側、耳と目の間』, アラン・リクト(木幡和枝監訳、荏開津広、西原尚訳), フィルムアート社, 2010
  • Noise, Water, Meat: a History of Sound in the Arts, Douglas Kahn, MIT Press, 1999
  • Sound by Artists, Dan Lander and Micah Lexier eds., Walter Phillips Gallery, 1990
  • Sound: Documents of Contemporary Art, Caleb Kelly ed., MIT Press, 2011, 2011

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