2019年12月01日号
次回12月16日更新予定

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『スプレーカン・アート』

Spraycan Art

1987年に英国のテームズ・アンド・ハドソン社から出版されたヘンリー・シャルファントとジェームス・プリゴフによるグラフィティ勃興期の写真集。米国の主要都市やヨーロッパを中心に世界各都市のグラフィティを紹介した初期作品として、『サブウェイ・アート』とともに古典として知られている。『スプレーカン・アート』という名称にも表われているように、グラフィティの違法性や破壊的性格を全面に押しだすというよりは、スプレー缶というツールを用いた新しく魅力的な若者文化という雰囲気で誌面構成がなされている印象があり、またそのグローバルな広がりに照準を合わせている。例えば、冒頭のイントロダクション部にはヒップホップ映画の金字塔『ワイルド・スタイル』(1983)の写真が掲げられており、80年代を通じて世界的な流行現象になりつつあったヒップホップ・ムーヴメントと連動するものとしてグラフィティを位置づけようとする意図がうかがえる。ニューヨークの地下鉄にかかれたグラフィティとその文化形態の包括的な紹介に特化した『サブウェイ・アート』とは、その点で趣が異なる。ニューヨークのシーン、リー・キュノネス、フリーダム、レボルト、クラッシュ、フェイス2、ロンドンのモード2、ブリストルのスリーディー、ゴールディー、パリのバンド、アムステルダムのデルタなど、著名グラフィティ・ライターたちの最初期の作品が掲載されている本書は、グラフィティの歴史を考えるにあたって今なお貴重な参照源であろう。

著者: 大山エンリコイサム+荏開津広

参考文献

  • Spraycan Art: Street Graphics/Street Art, , Henry Chalfant and James Prigoff, Thames & Hudson, 1987
  • アゲインスト・リテラシー ─グラフィティ文化論, , 大山エンリコイサム, LIXIL出版, 2015

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