2019年11月01日号
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『マッシヴ・チェンジ』ブルース・マウ

Massive Change, Bruce Mau

2004年に出版されたブルース・マウの編集による書籍。マウは、カナダのトロントを拠点とし、グラフィックやエディトリアル方面から出発しつつも、通常のデザイナーの職域を遥かに超えた活動で知られる新たなタイプのデザイナー。Zone Books社の雑誌や書籍の仕事で注目され、レム・コールハースとの共作『S, M, L, XL』(1995)のエディトリアルで決定的にブレイクした彼は、本書では、ともすれば出口のない危機に直面しているかに見える現代世界を変革するための新たなデザインの可能性をいくつも提示している。マウの考えでは、「自然>文化>ビジネス>デザイン」というかつての包含関係は、いまや「デザイン>自然>文化>ビジネス」へと変わった。デザインはいまやあらゆるものを超えた最大のプロジェクトと化したのであり、だからこそグラフィックやプロダクトやファッション等の従来的なデザイン領域に自閉してグッド・デザインを画策する以上に、デザインによる公益(=パブリック・グッド)を目指し、デザインが世界全体に及ぼす良い効果こそを推進しなくてはならない。たとえば、都市への居住の集中による自然保護エリアの拡大、セグウェイやリニア・モーターカー等による新しい移動や交通地理の実現、廃棄物をなくす完全なリサイクルのシステム、進化のオペレーションや人工身体の生産、等々。マウはそれらを、世界をマッシヴに変革しうる可能性を持つデザインの実例として取り集め、本書で未来へ向けて発信しているのだ(関係者へのインタヴュー等も掲載)。だが、これは生のあらゆる領域をデザインがコントロールしようとするトータル・デザインの極致とも言え、デザインの全体主義となる怖れも孕む。たとえば、ハル・フォスターは『デザインと犯罪』(2002)で、生の全域をスタイリングしようとするこうしたマウのデザイン概念に、強烈な反駁を浴びせている。

著者: 瀧本雅志

参考文献

  • Massive Change, Bruce Mau, Jennifer Leonard and Institute Without Boundaries, Phaidon Press, 2004
  • Life Style , Bruce Mau, Phaidon Press, 2000
  • 『デザイン・クォータリー』第4号, 翔泳社, 2006
  • 『デザインと犯罪』, ハル・フォスター(五十嵐光二訳), 平凡社, 2011
  • 『装飾と犯罪 建築・文化論集』(新装普及版), アドルフ・ロース(伊藤哲夫訳), 中央公論美術出版, 2011

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