2019年08月01日号
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『モダンデザインの展開 モリスからグロピウスまで』ニコラウス・ペヴスナー

Pioneers of Modern Design from Wiiliam Morris to Walter Gropius, Nikolaus Pevsner

1936年に出版されたドイツ出身の建築史家ニコラウス(ニコラス)・ペヴスナーの著作。初期デザイン史の古典と見なされることも多いが、工業製品・家具・印刷物等の実例はさほど登場せず、意匠の変遷それ自体を主題とした本ではない。初版の原題は、第二版以降とは異なり『Pioneers of Modern Movement……』であり、本書のそもその主旨は、ウィリアム・モリスの時代から始まり1914年のグロピウスに至ってモダン・スタイルが成立する事情を跡付けること、またそのように近代の建築や装飾を主たる論題とするにあたって、幾人かの先駆者に焦点を当てながら近代運動の足跡を再認することにあった。ここでの記述は、単線的な発展史というより、(1)モリスとアーツ&クラフツ運動(社会に奉仕する工芸&製品のアート)、(2)アール・ヌーヴォー(時代の新たな美を創造するアート)、(3)19世紀の工学技術と建築(テクノロジーという語源的にはアートと同根の活動)の三つの支流=アート(技術・芸術)が、グロピウスのもとで合流し、新たなスタイル=様式となって結実するという流れを取っている。これに対し、『モダンデザインの源泉』(1968)でも確認できるよう、後の彼の著作では二項対立的な論調が強まる。近代運動と歴史主義、機能と表現が対比され、機能主義者を自任する彼は、後者に抗して前者の意義を主張し続ける。その背景には、近代運動がMoMA流のインターナショナル・スタイルとして意匠表現化し、しかも厳格には遵守されない気軽なデザイン上の選択肢(歴史的リソース=源泉)と化してしまった時流があった。そうした近代運動「後」の動向にペヴスナーは異を唱えた訳だが、しかし1949年に増補改訂がなされた本書第二版の版元はMoMAだった。そして、このとき書名は『Pioneers of Modern Design……』へと変わり、以来それはデザイン史の古典として広く流通しはじめる。

著者: 瀧本雅志

参考文献

  • 『モダン・デザインの展開 モリスからグロピウスまで』, ニコラス・ペヴスナー(白石博三訳), みすず書房, 1957
  • 『岡山県立大学デザイン学部紀要』, 「デザインの起源」, 五十嵐光二、takimoto, 岡山県立大学デザイン学部, 2005

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