2019年12月01日号
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『今日の芸術』岡本太郎

Kon'nichi no Geijutsu, Taro Okamoto

美術家の岡本太郎の主著。1954年に刊行されるやたちまちベストセラーとなり、その後現在まで長く読まれ続けている。岡本が芸術の根本条件として挙げた「今日の芸術は、うまくあってはならない。きれいであってはならない。ここちよくあってはならない」は、99年の文庫版に序文を寄せた横尾忠則が証言しているように、当時はおろか現在のアートシーンにも大きな影響を与えている。岡本は本書において、絵はうまく、美しく、快いものであるという価値基準を転倒しようとしたが、そのとき手がかりとしたのが「いやったらしい」である。それは「否応なしに、ぐんぐんと迫って、こちらを圧倒してくるようなもの」であり、「一種の不快感」のことで、ピカソの《アヴィニョンの娘たち》や古代エジプトの《ツタンカーメン》に認められるものだという。岡本が肯定的に評価したこの「いやったらしい」という暴力性が、たとえば読売アンデパンダン展における「反芸術」に見られるように、戦後の日本美術に与えた影響は計り知れない。文庫版の解説で赤瀬川原平は、57年に来日したジョルジュ・マチュウが日本橋の白木屋で公開制作をした際、荒川修作や篠原有司男、吉村益信ら、後にネオ・ダダイズム・オルガナイザーズを結成することになる美術家たちが野次馬となっていたが、彼らの大半が本書を熟読していたという。ただその一方で、とりわけ「うまくあってはならない」という条件が、結果的に技術を相対的に軽視する風潮をもたらしたことも否定できない。

著者: 福住廉

参考文献

  • 『今日の芸術 時代を創造するものは誰か』, 岡本太郎, 光文社知恵の森文庫, 1999

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