2019年06月15日号
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『写真のアルケオロジー』ジェフリー・バッチェン

Burning with Desire: The Conception of Photography , Geoffrey Batchen

ジェフリー・バッチェンが1997年に上梓した『Burning with Desire: The Conception of Photography(欲望に焦がれて 写真の着想=懐胎)』の邦訳。本書はシドニー大学に提出された博士論文「写真のグラマトロジー」がもとになっており、バッチェンがヴァナキュラー写真論を展開する以前の代表的な仕事である。18世紀末から19世紀前半にかけて「自然の画像を定着させる」という身を焦がすような欲望に駆られた科学者や画家、発明家たちをバッチェンは「原写真家たち」と呼び、彼らの言説を詳細に掘り起こすことによって、「写真」という着想がその起源においてすでに懐胎していた複数性を提示する。バッチェンの主張は「写真」と呼ばれるひとつの発明が、その前史においてさまざまな欲望や差異、分裂、矛盾を孕んでおり、同一性を固定することが不可能なものではないのかということである。本書ではそうした複数の欲望に貫かれた「写真」の非同一性が提示されるとともに、「写真を撮る欲望」を抱いた「原写真家たち」がヨーロッパ各地にほぼ同時期に出現したことも指摘されている。写真の起源の物語の同一性を差異へとずらすことによって、写真のパイオニアたちの欲望が19世紀前半における知の配置の変動に由来するものであることが見出される。ジャック・デリダの「脱構築」やミシェル・フーコーの「系譜学」を参照にしながら、写真をめぐる硬直した言説を解きほぐそうとする写真論である。

著者: 小原真史

参考文献

  • 『時の宙づり 生・写真・死』, ジェフリー・バッチェン、甲斐義明、kohara(甲斐義明訳), IZU PHOTO/NOHARA, 2010
  • 『photographers' gallery press』 no.7, 特集=写真史を書き換える 写真史家ジェフリー・バッチェン, photographers' gallery, 2008
  • 『写真のアルケオロジー』 (視覚文化叢書) , ジェフリー バッチェン(前川修、佐藤守弘、岩城覚久訳), 青弓社, 2010

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