2019年11月01日号
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『反美学 ポストモダンの諸相』ハル・フォスター

The Anti-Aesthetic: Essays on Postmodern Culture, Hal Foster

批評家のハル・フォスターにより編まれた論文集。1983年出版。フォスターによる序文とポストモダン文化に関する全9編の論考を収録。各編で扱われている主題は建築、彫刻、絵画、写真、音楽、映画、文学、政治など多岐にわたり、あらゆる領域に関わるモダニズムおよびポストモダニズムの諸問題を包括的かつ批判的に検証した評論集として広く読まれている。本書の主眼はポストモダン文化をさまざまな角度から考察し、その重層性を提示することに置かれている。フォスターは資本主義社会下の文化を短絡的に肯定するためにモダニズムを闇雲に拒絶する立場を「反動(reacition)のポストモダニズム」として批判。それに対するものとして、閉塞的な状況の打開を目的としてモダニズムを積極的に脱構築していく「抵抗(resistance)のポストモダニズム」の実践を提唱する。序文に続くユルゲン・ハーバーマス「近代──未完のプロジェクト」では失効したかに思われたモダニズムのさらなる可能性が再考されるが、後に連なる論考はいずれも各領域における「抵抗」の実践例を示したものだ。近代建築におけるユートピア主義の破局を取り上げたケネス・フランプトンや、近代的男性支配への批判としてフェミニズムを捉えたクレイグ・オーウェンスは、絶えざる進歩を前提とした近代の失墜を明らかにする。美術界ではモダニズムの断絶が起こり、その影響は、ロザリンド・クラウスが論じた彫刻理論の解体や、ダグラス・クリンプが言及した美術館という近代的制度の崩壊に現われている。文化批評を扱ったものには、グレゴリー・L・ウルマーとエドワード・W・サイードの論考がある。また、フレドリック・ジェイムソンはポストモダン文化に共通する特徴をパスティーシュや分裂症といった概念を用いて論じ、ジャン・ボードリヤールは資本主義社会下の新たな時間と空間の様態を描き出している。

著者: 高橋聡太

参考文献

  • 『反美学 ポストモダンの諸相』, , ハル・フォスター(室井尚、吉岡洋訳), 勁草書房, 1987
  • 『ポストモダンの条件 知・社会・言語ゲーム』, , ジャン・フランソワ・リオタール(小林康夫訳), 水声社, 1989
  • 『カルチュラル・ターン』, , フレドリック・ジェイムソン(合庭惇ほか訳), 作品社, 1989
  • 『シミュラークルとシミュレーション』, , ジャン・ボードリヤール(竹原あき子訳), 法政大学出版局, 1984
  • 『ポストモダニティの起源』, , ペリー・アンダーソン(角田史幸ほか訳), こぶし書房, 2002

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