2019年06月01日号
次回6月17日更新予定

Artwords(アートワード)

twitterでつぶやく

『日本の民家』今和次郎

Nihon no Minka, Wajiro Kon

バラック装飾社や考現学の創始者である今和次郎による著作。「民家」という言葉を世に広めた本として知られる。今は1917年から5年間、北は北海道から南は九州を旅し、漁村、農村、郊外の民家を調べ、22年、『日本の民家 田園生活者の住家』を刊行した。今による民家調査は、17年に参加した「白茅会」※1での活動をきっかけに始まり、ドローイングと観察記という、彼独自の方法で行なわれた。調査対象は、家屋の外観や間取り、周囲の植栽、家具や障子の引き手といった細部にまでわたり、平面図、断面図、パースを用いて、民家の様相が詳細に描かれた。また、民家単位だけでなく、村単位での民家の変遷、生活の変遷、生産構造を調査しており、これらは今が参加した「郷土会」※2での、神奈川県内郷村の調査より始まった。初版(1922)が刊行されて以降、第4版(1954)まで重版されるたびに、その都度、内容が追加されており、現在、第5版(1989)まで出版されている※3。これら増補された内容には、初版刊行以降の今による民家調査の成果も追加されており、新たな見解も書き加えられている。特に第4版で追加された「間取りの由来考」では、54年の今による民家の間取り形式の由来についての論考が記載されており、この本が今の民家研究の進歩とともに形成されてきたことがわかる。

著者: 足立優太(大阪市立大学倉方研究室)

参考文献

  • 『日本の民家』第4版, 今和次郎, 相模書房, 1954
  • 『日本の民家』第5版, 今和次郎, 岩波書店, 1989
  • 『今和次郎 その考現学』, 川添登, 筑摩書房, 2004
  • 『「建築外」の思考 今和次郎論』, 黒石いずみ, ドメス出版, 2000

註・備考

  • ※1:佐藤功一、柳田國男らが中心なって、民家保存を目的として活動した会。 ※2:1910年より新渡戸稲造の自宅で開かれた研究会の総称。柳田國男が幹事となり、農村調査を主の目的としていた。 ※3:今和次郎の死後に重版された第4版は基本的に第5版と内容は変わらない。

年代

ジャンル

関連ワード

関連人物

▲ページの先頭へ

アートワード検索

アートワードを検索

文字の大きさ