2019年09月01日号
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『茶の本』岡倉天心

The Book of Tea, Kakuzo Okakura

西洋社会への「茶」の理解を促すため、1906年に岡倉天心(覚三)が英文で執筆した著作。NYのフォックス・ダフィールド社から岡倉覚三名義で刊行された(日本語訳の出版は1929年)。前年にボストン美術館の中国・日本美術部の顧問に就任した天心が、アメリカと日本を往復する生活のなかで成立させた書物である。日本の住居、習慣、衣食、陶漆器、絵画などのすべてに茶の湯の影響が行きわたっているとの立場から、茶の湯をひとつの総合芸術のように理解する天心にとって、茶は日本文化を総体的に記述することのできる文化様式だった。しかしながら、本書で天心は、茶道の由来を老子ならびに道教などのアジア起源に求め、日本独自の展開を遂げた茶を「世界的に重んぜられている唯一のアジアの儀式である」とも主張する。このようなアジア圏の重視は、『東洋の理想』冒頭に置かれた「Asia is one」という標語にも通底するものだ。数寄屋を「空き屋」と読み換え、茶とは、「不完全」を心のなかで完成させる美学であり、一連の行動様式や心遣いを要する「即興劇」であると述べる岡倉にとって茶とは、無形のパフォーマンスに支えられた非物質的な「虚」の芸術だったのである。

著者: 沢山遼

参考文献

  • 『東洋の理想』, , 岡倉天心, 講談社学術文庫, 1986
  • 『茶の本』改訂版, , 岡倉覚三(村岡博訳), 岩波文庫, 1961

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