2019年11月15日号
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『視覚的無意識』ロザリンド・E・クラウス

The Optical Unconscious, Rosalind E. Krauss

もともとはヴァルター・ベンヤミンが「写真少史」(1931)で使用した語だが、ロザリンド・E・クラウスは1993年の著作『視覚的無意識(The Optical Unconscious)』のなかで、W・ベンヤミンのこの概念を援用し、視覚芸術の基盤をなす「視覚」と主体との安定した関係を解体する「無形(アンフォルム)」なものの産出を試みた。W・ベンヤミンは、意識には上らない隠された細部が写真や映像に撮影されることで解明されることを「視覚における無意識なもの」と呼び、それを精神分析における無意識の作用と同様のものであると指摘した。S・フロイトによれば無意識とは、言い間違いや書き間違いなどによって、人の意識の統制を逃れて徴候的に露呈するものである。クラウスはこの視覚的無意識を、知覚の座標軸が解体され、人間の視覚が、自らが眺めるものの支配者となることなく、見るものに対して侵され滅却される――図と地や空間の内と外の区別が崩壊するような――主体の地面=足元への脱固定化であると論じた。クラウスはG・バタイユの「低級唯物論」に言及しながら、このような低級さ=低さへと吸収されることが「高貴/卑俗」「形相/質量」などの伝統的二項対立に対して第三の審級を打ち立てる(その意味でデリダ的な)脱構築をもたらすという。したがってこの「低さ」は、視覚的=近代的主体の領野に「別の」批評基準を滑り込ませるものであった。

著者: 沢山遼

参考文献

  • 『批評空間臨時増刊号 モダニズムのハード・コア』, 「視覚的無意識」, ロザリンド・E・クラウス, 太田出版, 1995
  • The Optical Unconscious, , Rosalind E. Krauss, MIT Press, 1993

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