2019年10月15日号
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『象徴交換と死』ジャン・ボードリヤール

L'Échange symbolique et la mort(仏), Jean Baudrillard

フランスの思想家・批評家であり、ポストモダンの代表的な論客であるジャン・ボードリヤールの5冊目の著作。出版は1976年。序盤では前作『生産の鏡(Le Miroir de la production)』の議論を引き継いでいるが、全体としてはより広範な議論を含む。多くの批評家は本書を十分にアカデミックな形式で書かれたボードリヤールの最後の著作とみなしている。ボードリヤールに影響を受けたポストモダニティの議論では「準拠枠(les référentiels)」「意味・方向(sens)」を欠いた記号である「シミュラークル(simulacre)」が盛んに論じられるが、ボードリヤールがこうした術語系を本格的に導入し、詳細な議論を始めたのは本書からである。構成は「生産の終わり」、「シミュラークルの領域」、「モードまたはコードの夢幻劇」、「肉体または記号の死体置き場」、「経済学と死」、「神の名の根絶」の6部構成。本来、互酬性の規則にしたがって交換されるべきであった象徴的な「死」を禁じ「延期された死」を生きることを強要する資本主義に対して、「返礼できない贈与」としての「挑戦的な死」をもってシステムを撹乱することを説いた本書は、『物の体系(Le Système des objets)』、『消費社会の神話と構造(La Société de consommation)』、『記号の経済学批判(Pour une critique de l'économie du signe)』などで展開された消費社会論の極限を示している。

著者: 小林嶺

参考文献

  • 『象徴交換と死』, ジャン・ボードリヤール(今村仁司、塚原史訳), ちくま学芸文庫, 1992
  • 『現代思想の冒険』, 竹田青嗣, ちくま学芸文庫, 1992
  • 『ジャン・ボードリヤール』, リチャード・J・レイン(塚原史訳), 青土社, 2006

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