2019年08月01日号
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『錯乱のニューヨーク』レム・コールハース

Delirious New York: A Retroactive Manifesto for Manhattan, Rem Koolhaas

1978年、オランダ人建築家レム・コールハースによって著わされた都市・建築論。本書では、著者自身が20世紀初頭のマンハッタン建築家の代弁者として、マンハッタン成立の過程から資本主義経済下で現われる都市的現象に至るまでを断章的に綴っており、そこに見出せる理論構造を「マンハッタニズム」と定義したことで広く知られる。出版当時の硬直化していたモダニズムの建築理論を乗り越えるものとして、ロバート・ヴェンチューリは古典的様式の引用によるポストモダンの建築論を唱えたが、コールハースはすでに反モダニズムを体現していたものとして、近代アメリカの摩天楼に着目した。マンハッタンのあらゆる空間原理は空間の最大効率化をめざす「過密」の論理に基づいており、この原理によって成立する都市のなかでは建築物の内部と外部、あるいは各階の機能が分裂する状況がもたらされる。コールハースはこれを「建築的ロボトミー」と称し、プログラムとアクティビティの機械的な並列に可能性を見出している。またグリッドによって分割される「ブロック」は、その範囲内での自由を保証しつつ、ほかのブロックとは切り離されている。資本主義の欲望から自動生成される錯乱した都市像は、規範的なモダニズムとは正反対のものだ。コールハースはそこで生まれる予想外の文化的突然変異を肯定し、正史としての「建築」と区別され黙殺されてきた存在を一転して議論の俎上に乗せた。資本主義経済の流れに身を任せ、ジャーナリスティックに振る舞う態度は、95年に彼が著書『S, M, L, XL』で提唱した「ビッグネス」や「ジェネリック・シティ」などの概念とも一貫している。

著者: 江川拓未

参考文献

  • 『錯乱のニューヨーク』, レム・コールハース(鈴木圭介訳), ちくま学芸文庫, 1999
  • 『ユリイカ』2009年6月号, 特集=レム・コールハース 行動のアーキテクト, 青土社
  • S, M, L, XL, Rem Koolhaas, Bruce Mau, Monacelli, 1995

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