2019年08月01日号
次回9月2日更新予定

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アナーキズム

Anarchism

無政府主義。「起源、根拠、権力arche」が「ないan-」という意味のギリシャ語の単語(アナルコス)に由来する。無政府主義(アナーキズム)とは、文字通り国家や政府による統治を否定的なものとして捉え、これらが最小化された社会を志向する政治思想である。歴史的に見れば、アナーキズムは社会主義ないし共産主義の延長線上にある思想であり、19世紀後半から20世紀前半にかけて隆盛を極めた。理論家としては、ロシアのバクーニンやクロポトキン、フランスのプルードンやソレルがその代表格であり、日本でも19世紀末から20世紀初頭に活躍した幸徳秋水、大杉栄などが代表的なアナーキストとして知られている。他方、今日アナーキズムを標榜する人々のなかにはリバタリアニズムを政治的信条とする者も多く、そのバックグラウンドは必ずしも一様ではない。例えば、アメリカなどでは国家や政府の最小化を志向する個人主義的自由主義が、その内実においてアナーキズムへと限りなく接近しているという事実が挙げられる。ここに、今日におけるアナーキズムの複雑さの一端を見てとることができる。アナーキズムと文学・芸術は各時代にわたって浅からぬ関係を築いてきた。19世紀のアナーキズムに影響を受けた画家のひとりにカミーユ・ピサロがいるが、それ以外にもアナーキズムを標榜したり、アナーキストを自認したりする文学者や芸術家は少なくない。とはいえ、上記のようにアナーキズム自体が複数の思想的背景をもっている以上、そこで志向されるアナーキズムはけっしてひとつの方向性に収斂するものではない。実際、政治と芸術という素朴な二項対立から出発し、政体を無化するための潜勢力を芸術のなかに見る立場から、非統制的な芸術表現そのものをアナーキズムと類比的に重ね合わせる立場、あるいは前近代的な村落共同体への回帰を訴える立場まで、その内実はさまざまである。

著者: 星野太

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